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イベント情報

2013/03/14

デイヴィッド・アーモンドさん宮古高校特別授業/古川日出男さんら朗読劇「銀河鉄道の夜」

■出演
デイヴィッド・アーモンドさん(児童文学作家)/古川日出男さんら(作家)

読売新聞社と出版文化産業振興財団は今秋、東日本大震災の被災地への応援活動「ことばを紡ぐ」プロジェクトを始めた。朗読劇、特別授業や文士劇を通して、復興を目指す被災地の人たちを、ことばの力で元気づけたり、子供たちに図書を送ったりする。国際アンデルセン賞を受賞したイギリス人作家のデイヴィッド・アーモンドさんが参加した高校の特別授業や、作家、詩人らによる「朗読劇 銀河鉄道の夜」無料公演の模様を紹介する。

 英作家と交流 大いに刺激  

 宮古高校特別授業 

デイヴィッド・アーモンド2.jpg
 岩手県立宮古高校は、校内読書会が毎年秋の恒例行事で、クラス単位で同じ本を読んでおり、それを特別授業とした。体育館で1、2年生約480人が待ち受ける中、被災地の高校生と交流を深めたかったというアーモンドさんと、通訳をする日本在住のアメリカ人詩人、アーサー・ビナードさんが登場すると、大きな拍手がわき起こった。
 アーモンドさんが作家の仕事について話しかける。「僕の仕事は物語の語り部。一番良い物語をどう作るかだ」。どう書くのか。「紙とペンがあれば出発できる。出発点となる僕のノートは汚くてごちゃごちゃ。そこから何を引き出せるか、紡ぎ出せるか。何度も書き直して出版社に渡し、さらに何か月もかけて完成させる」。着想に推敲(すいこう)を重ね、書いていることを明かした。
 作品は世界中の人を読者に想定。しかし、最初から世界中の皆を書こうとすると大味で、つまらない物語になるため、一握りの、本物の人間を深く観察して書く。ひとりを描けば、それが皆につながる表現になるからだという。
 ビナードさんの親しみやすい通訳もあって、緊張が徐々に解けて、話に引き込まれていく生徒たち。生徒たちからは「好きな日本の作家は」「作品に嫌な教師が出てくる。それは体験したのか」などの質問があった。飛び入りで質問する生徒も出てきた。芭蕉、遠藤周作、三島由紀夫や、黒沢明の映画「羅生門」が好きと日本通ぶりを示す一方で、「宮古高校生徒2.jpg高校は大嫌いだったので、皆が通っている姿を見るとえらいと思う」とちゃめっ気を見せ、「高校生の頃、私を実際にいじめた先生を作品に書いた。同級生や先輩が読んで『そっくりだった』と言ってくれた」と答えると、笑いが起きた。ビナードさんが、アーモンドさんの作品「世界のまんなか」にある言葉を説明しようと、女子生徒を壇上に上げる場面もあった。
 朗読、プロの舞踏家のダンス、音楽家のピアノ演奏も交えた1時間半あまりの多彩な特別授業が終わった。生徒たちの顔には、作家の生の言葉に触れ、自分たちへの強い思いがあることを知ったことの喜びがあふれていた。昆奨貴(しょうき)さん(2年)は「文学に興味はなかったが、これからは読んでみよう。読む時は、本の向こうに作家が見えるようになりたい」と目を輝かせ、清水わかなさん(同)は「今、考えていることが将来につながる。嫌なことも面白いことも心にとめておこうと思った」と話し、心に深く残った様子だ。
 アーモンドさんを招いた日本国際児童図書評議会の早川敦子理事は「彼は、絶望の中に光があることを信じて書いている。この地に来て、震災に遭った子供たちに、言葉を通して希望の種をまき、光を一つともしてくれたようで、うれしく思う」と特別授業を振り返った。

 
 

デイヴィッド・アーモンドさん 「Be brave(勇気を持て)」 

 アーモンドさん=写真=に東日本大震災、岩手県を訪れての発見、高校生との交流などについて話してもらった。宮古高校特別授業2.jpg
     ◇
 日本には今までに2回(2005年の春と秋)来ており、自分にとって親しく、好きな国だ。その国が東日本大震災という大きな災害に見舞われたことは本当にショックだった。
 遠くで心配するだけだったが、人ごとではなかった。被災した岩手県に行く機会を得たことは、自分にとって意味があることと思う。
 好きな作家の宮沢賢治が生き、仕事をした岩手県花巻市も訪れることができた。自分がこの足で、その地に立ったことは「素晴らしい」の一語に尽きる。この旅には新しいノートを持ってきて印象を書き留めているが、最初のページは岩手県だ。将来、賢治の世界の印象を作品にしようと思う。
 物語は、人間を生かし、力づける。被災地である宮古高校の生徒に会いに行ったのは、作家として、彼らに生きる力を取り戻し、力づけるため、物語の力を伝えたい思いからだ。
 宮古高校では、生徒から質問を受け、自分の物語を読んでくれている人が、国境を越えてつながっていると感じた。困難があるだろうが、あの空間を共有して生徒たちにポジティブなエネルギーを感じた。「Be brave(勇気を持て)」とメッセージを送りたい。自分も作家として勇気を持って書き続ける。(聞き手 石山和彦)
 
 

 【デイヴィッド・アーモンド】1951年イギリス生まれ。98年に発表した作品「肩胛(けんこう)骨は翼のなごり」で同国の児童文学賞「カーネギー賞」を受賞。2010年には、小さなノーベル賞と呼ばれ、世界で最も権威のある児童文学賞「国際アンデルセン賞」を受賞した。
 

 

賢治の世界 声で楽しむ 

被災3県で朗読劇


 福島県喜多方市内にある酒蔵を改造したイベント会場で9月、「朗読劇 銀河鉄道の夜」無料公演が開かれた。出演したのは、福島県出身の作家、古川日出男さん、詩人の管啓次郎さん、翻訳家の柴田元幸さん、音楽家の小島ケイタニーラブさんの4人。
 2部構成で、1部は宮沢賢治の詩の朗読など。「雨ニモマケズ」を出演者と観客がかけあって朗読した。2部の朗読劇は、銀河鉄道に乗った後のジョバンニとカムパネルラに焦点を当て、命の大切さを考えさせる内容だ。震災後、古川さんが原作を元に脚本を書いた。4人は、現実の重さを見据えながら、言葉、演技、歌で被災地への思いを伝えようと演じた。幕が下りると、出演者は観客に囲まれた。管さんは「率直に良かったと言われ、うれしかった」と話す。古川さんたちも「それぞれの土地でもらうものがいっぱいあった」と振り返る。
 公演は、岩手県住田町朗読劇「銀河鉄道の夜」2.jpg、宮城県南三陸町でも開かれた。このうち住田町の公演では終了後、中学生を対象にしたワークショップが行われ、町立世田米中学校総合文化部の1、2年生9人が参加した。
 管さん、柴田さんらも加わって輪を作り、三つのグループに分かれて賢治の詩「小岩井農場」の朗読に挑戦した。「公演の第3部と思い、全力を出して臨む」と意気込む古川さんが指導役として輪の中を回り、グループを指名、詩を読んでゆく。
 緊張でことばがつかえてしまう生徒、声が出ない生徒。何度も繰り返し、張りつめた雰囲気が漂う。それでも最後は「プロのレベルでやったくらい聞き応えがあった」(古川さん)ほどの出来栄えで、生徒たちも笑顔を見せ、同中2年、菅原三四郎君は「言葉が人に感動を与えることを知った」と声を弾ませた。
 住田町の公演前日、一行は岩手県大船渡市の仮設住宅で、住民とも交流した。住民の平山睦子さんは「たくさんの支援があるが、言葉の触れ合いがあるこういう支援は命が宿ったようで、心に寄り添うのでうれしい」と話し、ことばの力を改めてかみしめていた。
 

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