21世紀活字文化プロジェクト

トップ >  イベント情報 > 学校図書館活用教育フォーラム 活字で養う学び方 読む力つけば書ける/伊集院 静さん、植田 恭子さん、門脇 久美子さん、田 直子さん、福原 優子さん、コーディネーター・河内 鏡太郎さん

イベント情報

2010/03/23

学校図書館活用教育フォーラム 活字で養う学び方 読む力つけば書ける

■出演
伊集院 静さん(作家)
植田 恭子さん(大阪市立昭和中指導教諭)
門脇 久美子さん(島根県東出雲町立揖屋小学校司書)
田 直子さん(兵庫県西宮市立浜脇中司書教諭)
福原 優子さん(西宮市立夙川小司書教諭)
コーディネーター・河内 鏡太郎さん(武庫川女子大客員教授)

 読書を通じて考える力や豊かな想像力の育み方を考える「学校図書館活用教育フォーラム」が2月27日、兵庫県西宮市の武庫川女子大で開かれ、教育関係者ら約300人が参加した。作家の伊集院静さんが「日本語のゆたかさ」と題して基調講演。続いて西宮市、大阪市、島根県東出雲町の小、中学校教諭や学校司書がそれぞれ実践報告した後、「活字文化がひらく知の世界」をテーマにパネルディスカッションし、学校図書館の役割の重要性などについて意見を交わした。フォーラムに合わせ、同大附属中の特別公開授業も行われた。

伊集院 静さん 基調講演 「日本語のゆたかさ」 

 一つのものを表現する時に幾つの表現力を持っているかというのは、その国の言葉の豊かさと能力を証明すると言われています。世界の言語の中で、日本語とフランス語が、修飾語や一つのものを例える時の表現が一番多い。

W伊集院氏.jpg 日本語はなぜ豊かなのか。幸せなことに、日本人は母国語を迫害されたり、なくしたりしたことがない。迫害を受けてないということは、進化をしていくということです。

 外から来た言葉を自分たちのものにするために、言葉本来のものを失わないで、様々な枝葉をつけた言語になっていることは、日本語だけが持つ特徴でもあります。漢字があって、平仮名、片仮名があって、古語があって、各地に方言があって、公家や商人の言葉、廓(くるわ)言葉があって。階級の言葉と領域の言葉と方言、そういうものが全部合わさって日本語になっているんです。

 読むという行為は、自分の体の内側で喜怒哀楽からなにからをすべて解釈していく特別な行いです。「こういうことなのかしら」と想像する。「あ、こういうことができてしまうんだ」と創造する。その二つの「ソウゾウ」を繰り返すことで、自分とは違う考えをする一つの人格がここにあるんだということを、自然に身につけているんですね。

 感情的に本を読むことも大事です。喜んだり、泣いたり、怒ったり、興奮したりとか。次の本を読んだ時には全部忘れてしまっているのですが、実はそういう感動や感情は、全部その人の体の中の淵(ふち)で眠っている。

 やがて、社会で苦節、辛酸を重ねていく時に、「あ、そうかもしれない」と思うことがあるんですね。それともう一つ、自分だけがこんなに苦しいんじゃないと、現実で見える時があるんですね。

 苦しんでいる人に、手を差し伸べようという気持ち。それはどこから来ているかというと、眠っていた、記憶が影響しているんだと思います。己を第一に考えるのではなく、他人を思いやれる品性につながっていくのです。

パネルディスカッション 「活字文化がひらく知の世界」

W河内さん.jpg 河内 子どもたちは月に5、6冊の本を読むというデータがありますが、大人は1・5冊しか読まない。それぞれの学校の先生たちは果たしてどれだけ読書をしているのでしょうか。
 
 福原 図書館の貸し出しカードを先生方のネームプレートの裏に入れてもらうようお願いしていますし、学校長も朝会や学校便りなどで本の紹介をしてくれています。学校の中で、いかに本が話題になるかが大きなカギになるんじゃないかと思っております。
 
  朝の読書の時間に先生たちも一緒に本を読んでいます。先生方も本を借りに来ますし、図書委員の子どもがカウンターにいる時に、先生が「本を貸して」と来ると、子どもがとても喜びますので、そういう先生も何人かいます。

 門脇 全校で読書活動を推進していく中で、W門脇氏.jpg先生方は実は本が大好きなんだということがわかり始めました。今、職員室の中で先生たちが本の話をしない日はないくらい。「この本を読んだらどう」と、学校司書の私に先生たちが本を紹介してくれるような状況になっています。

 植田 学級文庫などの本を選ぶ時に、たくさんの先生のお力を借りています。そうした交流を通して、職員室が、まず学び合い、高め合う場でないといけないんじゃないかなと考えております。本校は幸いにも複数の新聞をとることができていますので、職員室の中でも比べ読みができる恵まれた環境にあるかなと思っています。

 河内 学校図書館を充実させることで、子どもたちが変わった具体例をお示しいただきたいんですが。

 福原 図書館での授業が充実してくると、子どもたちがW福原氏.jpg選んで借りていく本の質が変わるということがあると思います。本が好きじゃない子は、本を選ぶのが苦手なんですが、興味のあることなどの話を聞いて、その子に合った本を手渡すことをしていくと、どんどん自分で進んで読んでいくようになります。子どもたちは本を読み、美しい日本語にたくさん触れることによって、日本語のリズムですとか、語感というのが自然に身についていくなというふうに思います。

 河内 本を読むことと物を書くこととは、どんな相関関係がありますか。

 門脇 うちは図書館活用教育を始めて3年ですが、3年前と今の子どもたちを比べたら、全く違うということははっきり言えるんです。今、1年生は平均で1人が200冊以上読みます。調べ学習のような時、読む力があるのでしっかり内容をとらえたことが書ける。また、考えがわからなくなって迷った時でも、前後の文章を読んで、ああ、その流れだったらこうだというふうに1年生なりに判断して書いたりするんです。担任の先生からも、「1年生ですが、算数の文章題がさらっと解けます」と言われたことがあり、とてもうれしく思いました。
W植田氏.jpg
 河内 植田先生の場合は、読書に加えて、新聞というものがテーマになるわけですけれども、読み比べの大切さを改めて教えていただけますでしょうか。

 植田 内容とか表現とかを読み比べ、共通性と差異性を見ていくことによって、他者の側に立って自己を相対化していく体験が幾つかできると思います。多様な思考、多面的な物の見方を養う意味においても、今を切り取っている新聞ならではの部分があるのではないかなと考えています。

 河内 キンドルも含めた電子書籍、携帯小説などが学校図書館にどこまで影響を及ぼすのか。そのあたりはどうですか。

 門脇 3年前の調べ学習では、子どもたちはすぐに「パソコンで調べていいですか」と言っていました。キーワードを入れれば欲しい情報が出てくる。そういう理屈はわかっているんですけど、実は上手にキーワードも入れられないし、W高田氏.jpg情報を正しく読み取ることもできない。おもしろいことに、今では、調べ学習でいきなりパソコンに向かう子どもはいません。本の方が自分の読める情報が確実に得られ、調べるうちに周辺の情報も幅広く入ってくる。子どもたち自身がそのことを感じているからです。

  子どもたちは携帯小説が大好きです。入門編としてはいいと思うんですが、それだけでは終わらせたくないので、「次はこっちはどう?」と、別の本を薦めるようにしています。調べ学習の点でも、やっぱり本がベースだなと。活字になって出版されているものというのは、新聞も書籍も、私はとても信頼しています。いろんな人から検証を受けて出版されているな、配られているな、と思うからです。

 (写真上から河内氏、門脇氏、福原氏、植田氏、田氏)

実践報告 「学校の蔵書、データ化」 

 大阪市立昭和中の植田教諭は、新聞記事を活用した授業について報告。各紙を読み比べることによって、同じニュースでも新聞によって情報の伝え方に違いがあることを生徒たちが学び、多様なものの見方や複眼的思考につながっていくことなどを具体例とともに紹介した。「情報センターとしての学校図書館に複数紙の配置を」と、さらに機能を高めていく必要性を訴えた。
     ◇
 島根県東出雲町立揖屋小の門脇学校司書は、学校図書館を積極的に授業に活用してきた3年間の取り組みについて紹介。授業で使う資料リストを担任、司書教諭、学校司書が共有し、タイムリーに児童に提供できる体制を整えていることなどを説明した。同校の取り組みは、町全体へと広がり、島根県が新たに学校図書館にかかわる財政支援に乗り出すなど大きな成果を生み出しており、「行政のトップが学校図書館の現状を正しく理解し、施策に反映していく動きが全国にも広がってほしい」と話した。
     ◇
 西宮市立浜脇中の高田司書教諭と同市立夙川小の福原司書教諭は、学校図書館と市立中央図書館との連携について報告。全小中学校の蔵書をデータベース化し、コンピューター検索により、他校からも本を取り寄せることが可能な仕組みを紹介したほか、新刊案内「読んでごらん、おもしろいよ」や、各教科の手助けになる図書資料を集めた冊子を作成し、全市挙げて図書館教育の充実を進めていることなどを紹介した。両教諭は「図書館は学校教育の大きな要。子どもたちの生きる力を育成する場として活性化していきたい」と語った。

W観客.jpg

特別公開授業 「英文を多読多書」

 特別公開授業を行ったのは武庫川女子大附属中SE(スーパーイングリッシュ)コースの3年9組。W特別授業.jpg安福勝人教諭とジュウェル・アンダーソン教諭の2人が、日本語を使わずに英語だけで多読多書授業を指導した。
 教室には絵本、小説、雑誌など英語の冊子を数百冊備えた本棚が置かれ、43人の生徒がその場で選んだ1冊を15分間精読。直後にその感想を15分間英文でつづった。英文を多読することは、英語力を身につけることに直結しているといい、辞書も使わず、短時間で長文のリポートを作成する生徒たちの姿に、参観者たちは驚いた様子だった。

 

主催=武庫川女子大学、武庫川女子大学附属中学校、活字文化推進会議、文字・活字文化推進機構
主管=読売新聞社
後援=兵庫県教育委員会、西宮市教育委員会、大阪府教育委員会、大阪市教育委員会、
     日本児童図書出版協会

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