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イベント情報

2009/03/28

千葉で「よみっこ運動」 子供が読書で慈善活動

 子どもたちの読書活動を通じて地域交流を深め、社会貢献も行う「よみっこ運動」が、千葉県市川市で始まって3年目。運動の“生みの親”である作家・劇作家の井上ひさしさんと、童話作家で文字・活字文化推進機構理事長の肥田美代子さん、よみっこ運動実行委員長の河西明子さんが、我が国の読書推進のあり方などについて語り合った。作家の日本ペンクラブ会長、阿刀田高さんが今月14日、同市で行ったよみっこ記念講演「おいしい読書」の内容と併せて紹介しよう。

鼎談

◆河西さん/間近で成長見る喜び 井上さん/大人にも読む楽しみ 
 
肥田さん/総合的な言語力大切 

■地域交流

 【肥田】 井上先生が「子どもと本の出会いの会」をつくられたのは、16年前でしたね。

 【井上】 そうですね。いろいろな出版社の方々と。

 【肥田】 それがきっかけで子どもと本の議員連盟をつくりました。私が国会で働かせていただいた原点なのです。よみっこ運動も井上先生の提唱ですってね。

 【井上】 イギリスやイタリアなどヨーロッパで行われているスポンサー付き読書を参考にしたものです。inoue.jpg

 【肥田】 どんなことをなさるのですか。

 【井上】 読書によって困っている友だちを助けるという運動です。まず子どもたちが本を読むことを隣近所の人に宣言し、「約束を守ったらいくらください」と契約を結びます。本当に本を読んだかどうかは図書館の司書などが質問をして確かめるのです。それに答えた子は確かに読んだということで、大人からほうびのお金をもらいます。10%は小遣いにし、90%は小児がん患者などのために寄付するという仕組みです。

 【肥田】 子どもたちが本を読み、地域の大人と交流する。そして社会貢献ができる。三拍子そろった運動ですね。でも、日本の感覚でどうかなと気になったのですが……。

 【河西】 最初は「お金で釣って読書をさせるのか」という声も出ました。お金は汚いという変な道徳観がありますから。今はみなさん協力的です。学校も教室を開放してくれています。

 【井上】 この運動が実現できたのは実行委員会のみなさんの熱意のおかげです。それと読売新聞さんの。

■全額を社会貢献  

 【肥田】 ところで、どうして市川市だったのですか、始められた場所は。

 【井上】 20年ほど住んでいましたから。緑がたくさんあり、しっとりと落ち着いたいいところなんです。

 【肥田】 第二のふるさとなのですね。河西さん、活動を詳しく聞かせていただけますか。

 【河西】 菅野、須和田、真間地域に住む小学生に絞って始めました。もちろん自由参加です。1回目が30人、2回目が42人。サポーターを同数以上募り、子どもたちと何度も交流してもらったうえで、本を読んだ感想を聞く発表会を開きました。

 kifu.JPG【井上】 サポーターが子どもたちと同じ本を楽しみながら読んでいたことに驚きました。

 【河西】 サポーター用の本は読売さんがそろえてくださるので、みなさんがたくさん読んでいます。

 【井上】 それはすばらしい副次効果ですね。大人の読書運動にもなるなんて。

 【肥田】 ごほうびは全額、社会貢献に使っているそうですが。

 【河西】 そうです。1年目は特別支援学校に、2年目は千葉県こども病院と国府台病院の院内学級に、約7万円分と約13万円分の本などを寄贈しました。

 【肥田】 喜ばれたでしょうね。寄付先はどのようにして決めたのですか。

 【河西】 子どもたちの話し合いです。グリーンカーテンをつくるために、つるの種を学校に贈れば冷房なんかしなくてもいいとか、アフリカの水に困っているところに、汚れた川の水などをきれいにする錠剤を贈ろうとか色々な意見が出ました。詳しく調べまして。

 【井上】 賢いですね。

◆自分の日本語を磨こう 

 ■言葉の劣化  

 【河西】 読書だけでなく、人前で自分の意見を述べることも大切にしています。

 【井上】 子どもたちにとってすごく大きな体験なんですよね。そこにサポーターの大人たちがついて、励まして。kasai.jpg

 【河西】 1年生のときに泣いてしゃべれなかった子が、2年になったら谷川俊太郎さんの詩についてとうとうと話しました。すばらしかった。子どもの成長ぶりを見るのも楽しみです。

 【肥田】 文字・活字文化推進機構をつくるときに考えたのは、言葉の劣化というか疲弊に、みんな頭を悩ませているということです。今起こっている社会現象はそれが原因なのかなと。

 【井上】 討論する力がなくなったと思います。すぐ感情的になったり、相対主義になったり。普遍的な何かが欠けてきたのでは。

 【肥田】 総合的な言語力が大切ですね。

 【井上】 そのためにはもうちょっと新聞を読む、本を読む、詩を読む、芝居を見る、映画を見るというふうに自分にいつも磨きをかけ、日本語にお金をかけていかないと。

 【肥田】 同感です。

 【井上】 オバマ(米大統領)さんの演説が評判になっていますね。

 【河西】 そうですね。

 【井上】 やさしい言葉を組み合わせ、リズムをつくりキーワードをつくってあれだけ人を感動させる。言葉の力を持った方ですね。

 【肥田】 オバマさんは大変な読書家なんですってね。家庭での読書教育が、最も大事だといつも訴えています。夕食後はテレビを消してゲーム機をかたづけ、親が子どもに本を読んであげてくださいと。

 ■国民読書年  

 【井上】 ところで、機構は昨年の夏、琵琶湖に子どもたちを集めて、読書キャンプをやったそうですね。

 【肥田】 参加したのは全国の小学5、6年生100人。事前に、「友だちにすすめたい本」という宿題を出し、船上で2泊3日の体験学習をしたのですが、たいへん深く読んでいるのに感心しました。おすすめ本について書いた冊子をお読みになってどうでしたか。

 【井上】 文芸時評の原型みたいなものもありました。hida.jpg

 【河西】 すごいですよね。小学生で。

 【井上】 来年、2010年は国民読書年ですね。

 【肥田】 昨年6月に国会で決議していただいたんです。衆参両院、全会一致で。活字離れや言葉の疲弊は経済の不安と同じくらい深刻だという危機感の表れです。機構は公共広告機構の協力で7月から2年間、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌を使って活字文化の振興と読書推進の啓発に力を注ぎます。国民運動を巻き起こすために。

 【井上】 本を贈る運動をしたらどうですか。チョコレートなどに代えて。うちのかみさんはいつもクリスマスになると嘆いています。どうして本を贈らないんだと。

 【肥田】 それはいいですね。どんなに新しいメディアができても、その基盤は活字文化、書物文化で】す。自らの言葉を持ち、自ら考える創造力豊かな人をはぐくむ国にしたいですね。

 【河西】 よみっこ運動が全国に広がればいいですね。そして交流ができれば。

 【井上】 そうですね。そうしたら河西さんは東奔西走しなくてはなりませんね。

《記念講演》 阿刀田高さん  

◆日本の文化本が支える 

 市川の「よみっこ運動」について、おおよそは知っていましたが、大きな成果を上げていることをいま聞き、うれしく思います。

 日本人は昔から、お金やものを使わず、深い境地を得ていく方法を編み出してきました。例えば俳句は17文字です。英語で「グッドモーニング、ハロー」というのと同じくらいの文字数で、自然と人間の心を通わせる。31文字の短歌なら1000年以上の歴史を持っている。atouda.jpg

 それを支えてきたものに「読書」があります。本は、それが作られる労力を考えれば、本当に安いと思います。また、読書は一人でできるのが良い点です。長い一生のうち、孤独に耐えなければならない時はいっぱいあります。そんな時にも本は、ずいぶん役に立ってくれると思います。

 このごろは本が読まれなくなったと言われますが、日本人はまだまだ相当の読書好き民族です。田舎の小さな駅を降りても、駅前に本屋さんがある。こんなに本屋がちゃんとある国は、ほかにありません。

 日本の文化というのは本当にすごいものです。例えば人形劇に携わっている外国人が日本へ来て文楽を見れば「私たちは修業が足りない」と思うでしょう。

 いま、世界中で日本の映画や劇画の評価が高い。映画監督や劇画作家には、大変な読書家が多いのです。読書を養分として自分たちの世界を広げている。

 その源となっている日本の文学の水準が高いことは間違いありません。ノーベル文学賞の受賞者がこれまでに15人いたっておかしくないレベルです。

 ただ、言語の違いから、他国であまり理解されていない。日本の文化は極めて特殊であるために、世界的に評価されない部分がたくさんありますが、すばらしいものです。その文化は、日本語を大切にすること、すなわち読書することで培われる。若い人たち、特に子どもたちにこのことを伝えていきたいというのが私の願いです。

 
 〈よみっこ運動〉  
 市川市文化振興財団の理事長でもある井上ひさしさんの呼びかけで、地域住民が実行委員会をつくって始めた運動。同財団が事務局となり、読売新聞東京本社内にある活字文化推進会議が協力している。今年は4月末から、参加児童やサポーターを募集する。問い合わせは財団(047・379・5111)へ。
  
 〈文字・活字文化推進機構〉  
 出版や新聞、経済など幅広い業界団体が2007年10月に結成した財団法人。子どもの読書活動推進法や文字・活字文化振興法に盛り込まれた施策を具体化し、言葉の力をはぐくむための様々な活動を展開している。問い合わせは機構(03・3511・7305)へ。
 

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