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イベント情報

2013/03/15

よみっこ運動記念講演会 「理科読と宇宙」

■出演
川口淳一郎さん(宇宙航空研究開発機構教授)
滝川洋二さん(ガリレオ工房理事長)
土井美香子さん(ガリレオ工房理事)

「理科読(りかどく)と宇宙」をテーマに「よみっこ運動記念講演会」が2月9日、千葉県市川市文化会館で行われた。基調講演では、宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))教授の川口淳一郎さんが、研究者への道のりを振り返りながら、次代を担う子供たちへの期待などを語った。理科読運動を進めるNPO法人「ガリレオ工房」理事長の滝川洋二さん、理事の土井美香子さんを交えたトークセッションでは、科学の本の読み方などについて語り合った。

基調講演

 
 ◇川口淳一郎(かわぐち・じゅんいちろう)さん 宇宙航空研究開発機構教授

未来を見続け挑戦を

よみっこ 川口淳一郎2.jpg
 今年は、彗星(すいせい)が二つやってくるということで話題を集めています。彗星は数年に一度やってきて、人生では10回くらい見るチャンスがある。1986年にハレー彗星が地球に接近しました。その観測のため、85年に日本最初の探査機を打ち上げました。私の最初の仕事でした。
 小、中学校時代、アメリカのアポロ計画のまっただ中で過ごしました。中学2年の時、アポロの月着陸を全世界実況中継で見た一人です。でも、アポロを見て宇宙を目指すことを、その時決めたのかというと、そうではない。アポロ以降、アメリカの宇宙開発はもう一つの違う方向に動き出した。木星、土星に探査機を飛ばします。どうしてそんなに遠くを正確に飛べるのか知ってみたくなった。大学時代、火星探査機が自動で行って着陸した。どうして自動で機械が動くのか。ロボットもやってみたい。そう思ったんです。そして、大学院に進学する時に、宇宙開発に携わってみようと思って歩み出しました。
 山中伸弥さんがノーベル賞をもらう何か月か前に対談し、共感しました。臨床医は、言われたことや教科書に書いてある通りにやるのが原則ですと言うんです。でも、研究は、言われたことを言われた通りにしているやつは駄目。教科書を信じるやつはバカだと言われてしまう世界です。読んで学ぶだけでは駄目なんです。でも、いろいろな興味を持つためには、本を読んで、積極的に情報に触れなくてはいけない。見た写真や絵、情報が、自分の中で大きくなり、いろいろな所に影響してくると思う。
 子供たちは、未来を見続け、挑戦してほしい。私が話したい唯一の言葉です。本を見て新しい情報に触れ、自分もと思って挑戦していくということが、日本を救う一番大きな原動力となるはずです。
 アポロ11号で月面に降りた飛行士の一人、オルドリンさんは、こんな言葉を言っています。「あのでかいロケットを打ち上げる動力は、実はエンジンじゃない。人間の魂だ」と。同感です。スピリットが宇宙開発を進めていくということを伝えたいと思います。
     

1955年、青森県生まれ。京大工学部、東大大学院博士課程。旧文部省宇宙科学研究所教授を経て現職。ハレー彗星探査機「さきがけ」や火星探査機「のぞみ」などの科学衛星に携わり、小惑星探査機「はやぶさ」では開発責任者のプロジェクトマネジャーを務めた。

 

トークセッション

感激 視点広がる

 よみっこ 滝川洋二2.jpg
 
 土井 川口さんの本を読むと、高い意志を持てと、メッセージを感じます。この世界に入るきっかけとなった本などについて聞かせてください。
 川口 高いというのは視点です。視点を見る意志を持てと言わせてもらう。本当にやりたいと思ったものが見つかれば良い。本を読むことは、情報に接するためにと考えています。
 土井 滝川さんは、本を読むことは親しく科学に接する方法と考えていますね。
 滝川 学校で理科の勉強をしているだけではできない、自分のペースで学んでいける世界が科学の本にはあると思う。自分の夢にどうやって挑戦するか、どんな工夫をしたら良いかなど書かれている。ぜひ、早くからいろいろな本を読む工夫をしてほしい。
 土井 読み方はどうですか。
 滝川 良いなと思うものを感激しながら読んで、ちょっと別なことをやると思うのが、いいんじゃないでしょうか。
 川口 全く同感です。本に書いてある通りたどっていく子供がいたら、書いた人は残念だと思う。世界を旅行する時、日本人は皆旅行ガイド本を持って歩いている。載っている写真と同じ場所に行って写真を撮る。逆ですよね。書いていない所に行き、素晴らしいと思えたら良いと思う。それが本の読み方だし、そういう考え方があってこそオリジナリティーと言うんでしょう。
 土井 はやぶさの往復宇宙旅行も、ほかの人がやっていないからこそという考えで取り組んだのですね。
 川口 その通りです。一番のスタートラインは、プロジェクトが始まるより前です。私たちもできるオリジナリティーって何だろうと話し合った成果だと思う。本を見てそれと同じことをたどるのでなく、逆に本は見ないで、自分たちで考えをいろいろまとめようとする。それが出発点です。
 土井 川口さん、思いつくとはどういうことなんでしょうか。
 川口 自分が描ける絵をずっと描き続ける。そういう飛び方ができるか、できないものは捨てていき、考えをまとめていく。生み出そうという考え方を取る姿勢が大事ではないでしょうか。1日のうち、発想が浮かぶのは5分ぐらいかもしれない。非常に単純な作業の中で生まれてくるようなものなので、そういうタイミングは至る所にある。
 土井 滝川さんはどうですか。よみっこ 土井美香子2.jpg
 滝川 たくさん見つけて、視点を広げていくことです。いつも何か面白いことがないかなと思いながら、いろいろなものに出会う。いろいろなテーマを自分の中に取り込んでいくのが必要じゃないでしょうか。
 土井 お薦めという本があれば紹介してください。
 川口 新田次郎の『孤高の人』は山岳小説ですが、科学的で、中には自分の仕事とも関係のあるエンジンに関する話が出てきます。困難をどう解決していくのかが興味深い。
 滝川 私は『0・1ミリのタイムマシン』。0・1ミリしかない、ものすごく小さなケイ藻の化石の話です。人生をどうやってかけていくかという話が、一つのことから世界をどんどん広げていく面白い生き方が書かれている。ぜひいろいろな本にふれて、書評で良いのがあったら、読み始めてほしい。嫌になればやめてよいわけです。
 土井 今の自分に合っていないと思ったら、さっさと次に行く。物語の中にも、理科のことがすごく書いてある本はたくさんある。どんどん視点を広げて、たくさん科学を楽しんで、皆さんに様々な読書体験をしてもらえればと思います。

 〈理科読〉
 子供向けの科学の本を紹介したり、読み聞かせのコツを指導したりして、子供たちが家庭で科学に興味を持つきっかけづくりをする運動。ガリレオ工房が2008年から各地でイベントを行っている。

人工衛星の技術 簡易実験で説明


 トークセッションの前に、滝川さんらは、探査機や人工衛星に取り入れられている仕組みを簡単な実験で説明し、宇宙に関する興味をかき立ててくれた。
 探査機が、惑星など天体の公転速度、重力を利用して加減速や向きを変える航法「スイングバイ」。実験では、傾斜を付けたボードに重力の代わりとなる強力な磁石を付け、鉄の玉を転がした。玉がカーブすると、会場からは歓声が上がった。人工衛星の太陽電池パネルを円滑に開閉するのに、役立っているのが日本の折り紙の技術「ミウラ折り」だ。携帯用地図にも使われている。参加者に配られたA4判の紙には、ギザギザの折り目があり、参加者たちも挑戦、紙がきれいに折りたたまれ、開くことを実感していた。
1955年、青森県生まれ。京大工学部、東大大学院博士課程。旧文部省宇宙科学研究所教授を経て現職。ハレー彗星探査機「さきがけ」や火星探査機「のぞみ」などの科学衛星に携わり、小惑星探査機「はやぶさ」では開発責任者のプロジェクトマネジャーを務めた。

◇土井美香子(どい・みかこ)さん ガリレオ工房理事 
 1955年、山梨県生まれ。子育て中に子供の読書活動に出会い、読み聞かせなどを始める。図書館司書を経て図書館コンサルタント。科学の本の読み聞かせの会ほんとほんと副代表、日本子どもの本研究会会員。
 ◇滝川洋二(たきかわ・ようじ)さん ガリレオ工房理事長 
 1949年、岡山県生まれ。国際基督教大高校教諭、東大教養学部特任教授などを経て東海大教育開発研究所所長。2002年、NPO法人「ガリレオ工房」設立。「世界一受けたい授業」「ほこ×たて」などのテレビ番組に出演。

 よみっこ運動 おすすめ本2.jpg
主催 活字文化推進会議、市川市文化振興財団
主管 読売新聞社
協力 市川よみうり新聞社


 
 

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