21世紀活字文化プロジェクト

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活字文化公開講座

2015/03/20

椙山女学園大学 「私を磨く 言葉の力」

■出演
北川悦吏子(脚本家)
住吉美紀(フリーアナウンサー)

言葉の大切さなどを考える「活字文化公開講座」(椙山女学園大学、活字文化推進会議主催)が11月8日、「私を磨く 言葉の力」をテーマに名古屋市千種区の椙山女学園大学で開かれた。同大文化情報学部の脇田泰子准教授をコーディネーターに、第1部では、「恋愛ドラマの神様」と呼ばれる脚本家の北川悦吏子さんとフリーアナウンサーの住吉美紀さんによるトークセッション、第2部では、二人に同大の学生3人が加わってトークセッションが行われた。市民と学生約300人は、魅力的なせりふ誕生の秘密や、読書の大切さの指摘に聞き入っていた。

故郷・岐阜舞台に

 北川悦吏子20150320.jpg
 ――本日は言葉を仕事にされているお二人に来ていただきました。「恋愛ドラマの神様」の北川さんはどのようにして脚本家になったのですか。
 北川 大学時代は脚本家になろうなんて考えていませんでした。就職活動で41社を受け内定は2社。そのうちの1社に就職しましたが、いわゆるブラック企業で、半年で辞めました。翌年、テレビ番組制作会社に入社。2週間の研修期間中は2時間ドラマを見て、その感想を書くだけ。その後はサスペンス・ドラマの企画書を書き続けましたが、なかなか通らず、等身大のラブストーリーのような企画を書くようになって採用されました。
 ――最新の単発ドラマ「月に祈るピエロ」では故郷の岐阜が舞台でした。
 北川 故郷を舞台にしたのは初めてです。実は窮屈さが嫌で、大学受験を名目に東京へ飛び出すほど、岐阜は苦手でした。しかし、多くの人が故郷を喪失した東日本大震災以降、考えが変わりました。高校を卒業するまでの18年間、岐阜にいたことは揺るがしがたい事実だし、今の自分をつくってくれたと思います。そんな時に「地元の話を書きませんか」という話をいただき、お受けしました。

番組制作も経験


 ――住吉さ住吉美紀20150320.jpgんはどうしてアナウンサーに。
 住吉 商社マンの父の転勤のたびに引っ越しを繰り返し、高校時代はカナダでした。帰国して大学入学後は、どんな仕事が合うか試そうと、スーパーのレジに始まり、色々なアルバイトやボランティア活動を体験しました。そのうち、自分が人に出会ったり、人に何かを伝えたりすることが好きだと気付き、NHKに入社しました。
 アナウンサーも地方局では職種の枠を超え、番組制作全体を経験します。「プロフェッショナル 仕事の流儀」のキャスター時代は、企画段階から会議に加わり、チームの一員としてやりがいを感じました。フリーになってから番組との関わり方が変わり、さみしさもありますが、より専門性を求められ、頑張っています。

 

 

「ロンバケ」裏話
 

 ――北川さんの代表作「ロングバケーション」(1996年)はどのように誕生したのですか。
 北川 私は出演者が決まらないと書けないタイプです。「ロングバケーション」は木村拓哉さんの初主演作として脚本の依頼を受けましたが、ヒロインがなかなか決まらず、ようやく山口智子さんに決まり年上の恋人という設定にしました。出身をどこにするのか聞かれ、とっさに「岐阜!」と答えていました。
 住吉 「ロングバケーション」が始まった4月に入社し、研修中もドラマを見ていました。山口さん演じる格好いい女性に憧れ、年下の木村さんとの恋にドキドキしました。山口さんの髪型や服装に憧れて、真似ていました。
 ――2000年の「ビューティフルライフ」は記録的な視聴率でした。
 北川 木村拓哉さんと常盤貴子さんの共演で、41・3%の視聴率は「半沢直樹」に抜かれるまで平成以降のドラマ最高視聴率でした。数字で現場はお祭り騒ぎとなり、みんなの覇気を高めますが、それが絶対ではありません。私の実感では「ビューティフルライフ」より「ロングバケーション」や「愛していると言ってくれ」を好きな人の方が多い。人の心に残る宝石になるのかどうかは、10年たってみないと分かりません。
 ――闘病などの経験や体験は脚本に生かされていますか。
 北川 車いすのヒロインを想定した時に、車いすを1日体験しました。周囲の冷たい視線に気分が落ち込んだり、見知らぬ女性に助けられて喜んだり。車いすの人に取材するよりも、自分が体験するということが、私にとっては大切です。
 ――住吉さんも体験や経験を大切にされますか。
 住吉 資料だけで終わらせず、現場へ行き、当事者に会うように心がけています。現場を肌で感じることで、その事実をいっそう伝えたいと思うようになるからです。私たちの仕事では、お腹の底から伝えたいという気持ちが湧きあがってくることが重要です。

お薦めの本は


 ――お二人にはみなさんにお薦めの本や、ご自分が影響を受けた本を持ってきていただきました。
 住吉 田辺聖子さんの「言い寄る」や「苺(いちご)をつぶしながら」がお薦めです。田辺さんの文章の美しさや、日本語ってこんなにすてきで色っぽい表現があることを知ってほしい。
 北川 同じ早稲田大学出身ということもあり、早くから村上春樹さんの作品を読んでいました。表現の美しさや比喩の見事さには圧倒されます。「ダンス・ダンス・ダンス」の中で、色が黒い女の子のことを「カフェオレの精みたいだ」と言う場面には、もう言葉も出ない。このような表現に出合うだけでも、村上さんの作品を読む価値があると思います。

知性で自分を磨いて
 

 ◇森棟公夫・椙山女学園大学学長森棟公夫学長20150320.jpg
 昨年の公開講座では、学生諸君の反応が非常によく、ぜひもう1回やってほしいという声も多かったので、関係者にお願いして今年も開催していただきました。お二人の講師の素晴らしいトークを聞き、「言葉の力」について、しっかり考えてください。
 お化粧で自分を磨くだけでなく、言葉による自分磨き、つまり知性で自分を磨いてほしい。きょうはそのいい機会です。それが出来れば、どんな場面にも役立ちます。言葉のひと言ひと言の力を理解しながら話すようになりましょう。

 

学生3人から質問 

一流の文章読みましょう 北川 話す工夫は書くのと同じ 住吉 


 ――第2部では、椙山女学園大学の国際コミュニケーション学部3年東(あずま)小百合さん、同鈴木夏南(かな)さん、文化情報学部2年学生トーク20150320.jpg丹羽ひらりさんが加わり、お二人に質問をします。
 東 私は放送文化研究会で活動しています。人に伝えるためには、どうしたらいいでしょうか。
 住吉 心の底から思っていることなら伝わります。そうなるまでの気持ちづくりを私は重視しています。
 北川 せりふに込めた作者の意図を役者さんが理解していないと伝わりません。どこまで理解してくれたのか、私の想像以上の演技となったのか、いつも真剣勝負です。
 鈴木 最近、感動したり、面白かったりした本を教えてください。
 北川 太宰治を全集で読みました。若い時に気付かなかった太宰の自意識過剰なところが見えてきて面白かったです。宮崎駿さんのアニメを見た後に堀辰雄の「風立ちぬ」も読みました。文章がすごくきれいです。みなさんはメールやネットで活字を読んでいるつもりかもしれませんが、どこまでいっても素人の文章です。時間は有限です。プロによる一流の文章を読みましょう。
 住吉 以前読んだ本ですが、マイケル・クライトンの「アンドロメダ病原体」は、近未来に本当に起こりそうな怖さがありました。
 丹羽 北川さんの大ファンです。すてきなセリフはいつ浮かんできますか。
 北川 誰かすてきな人を自分の横に置いておく。もちろん想定でもいいんですよ。その人にラブレターを書くようなつもりになったらいかがですか。
 東 恋愛小説はどんなところが好きですか。
 北川 恋愛小説ではありませんが、佐野洋子さんのエッセー「私の猫たち許してほしい」に登場する彼氏に振られた友だちを慰める話が大好き。
 住吉 海外ドラマの「セックス・アンド・ザ・シティ」が私のバイブルで、女同士の友情の部分にぐぐっときます。
 鈴木 今の職業についてよかったと思ったのは。
 住吉 海外と日本をつなぐ仕事がしたかったので、「世界遺産の旅」という海外からの生中継番組を4年間担当できた時です。
 北川 視聴者に「今までで一番好きなドラマです」とか「ドラマの影響で東京に出てきました」と言われた時や、役者さんが想像以上のお芝居をしてくれた時です。
 丹羽 書く力はどうやったら身に着くでしょうか。
 住吉 書くことが苦手でしたが、人に興味を持ってもらうために、どう表現したらいいのか、どんな言葉を使ったらいいのか、どんな順番で話したらいいのかという工夫は、文章を書く際も同じだと分かり、今では書くことが大好きです。
 北川 技術論より、私の場合は何かをきっかけにして、ところてんのように言葉が出てきて、メモ代わりにツイッターに書き込んでいます。
 ――最後に、会場の学生たちへメッセージを。
 北川 若者の可能性は無限だし、人生は誰かのせいでも運でもありません。自分の心の声を聞き、本当にどうしたいのかを考えて、目標へ向かって1日に5ミリでも着実に進んでほしい。
 住吉 学生時代には、今しかできないこと、好きなこと、やりたいことを一生懸命にやってください。それが自分の特徴や長所となります。
 

◇きたがわ・えりこさん
 1961年、岐阜県生まれ。早稲田大学卒業。テレビドラマ「素顔のままで」「ロングバケーション」「ビューティフルライフ」などを手がけ、映画「ハルフウェイ」「新しい靴を買わなくちゃ」では監督。近著に「愛のこと。恋のこと。」。
◇すみよし・みきさん
 1973年、神奈川県生まれ。国際基督教大学卒業。NHKのアナウンサー時代は「プロフェッショナル 仕事の流儀」を担当。現在はTOKYO・FMにレギュラー出演し、週刊誌で著名人との対談を連載中。著書に「自分へのごほうび」。


 

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