21世紀活字文化プロジェクト

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読書教養講座

2008/02/05

「活字から広げる世界、イメージを立ち上げる力」

■出演
篠田節子さん(作家)

「学生に読書の喜びを知ってもらい、本好きを増やそう」と、活字文化推進会議と大学が共同で読書教養講座を始めて3年。各大学ともカリキュラムに工夫を凝らしているため、学生の評判は上々で履修生も年々増えている。
  作家の篠田節子さんが先月に青山学院大学(東京・渋谷区)で、カリスマ書店員として知られる田口久美子さんが昨年11月に国士舘大学(東京・町田市)で行った特別授業をのぞいてみた。

青山学院大学 読書教養講座 一般公開授業

基調講演

  特別授業は履修生11人をホールの舞台に上げ、教室に見立てた形で行われ、約400人の市民も受講した。篠田節子さんは作家の立場から、小説の読み方や文章論など、若い世代へのメッセージを熱く語りかけた。

  「文学や小説だけでなく歴史、哲学、自然科学、経済学などどんな本を読んでも読書としてとらえることができます。その意味では、今の学生も活字自体には十分に親しんでいると考えています。これからエンターテインメント小説を通して、読書が人生をいかに豊かにするかお話ししたい」

本読み「冒険」楽しんで

20080205a_01.jpg  篠田さんは次々と学生を指名して、ケータイ小説として話題になった美帆の『最愛の君へ。』、重厚で難解な文章で書かれた菊地秀行『かけがえのない存在』、人気作家の宮部みゆき『弓子の後悔』の一節を朗読させた。

  「最初の小説は、世界が読者の感覚に限りなく近いところがミソなんですね。余計な描写や説明はいらない。読者と同じ土壌に立っているので容易に共感できる。一方、菊地さんの共感を拒否する幻想的な文章も、もっと読んでみたいという気にさせる不思議な魅力があるでしょう。宮部さんの小説は巧みなストーリーにより単なる共感を超えた、人生とは何だろう、世界はどうなっているんだろうと考えさせる世界に読者を連れていきます」 

  「最近は、泣けるとか共感できるということばかりが重視されますが、読書の楽しみは、もう一歩踏み込んだところにある。小説の面白さというのは、作家の想像力によって、別の人生を生きられることです。異世界がきちんと構築されたとき、作品の中に放り込まれた読者は不思議な冒険を楽しむことができるはずです」 

好きな作家、読破しよう

20080205a_02.jpg

  「この小説を理解するには、ある程度の科学的なものの考え方を把握していなければなりません。幅広いジャンルの本を読み、知識を深めている方が読書を楽しめるということです」 

  話はさらに、映像と視覚描写における文章表現の対比に展開していく。スティーヴン・キングの『スタンド・バイ・ミー』の朗読の後で、篠田さんは続けた。 

  「読んでいて、いい文章だなと思わせたらむしろだめ。目は活字を追っているのにもかかわらず、読んでいるという意識が消えて目の前に大きなスクリーンが広がり、鉄橋の向こうから列車が迫ってくる。面白い小説には豊かな臨場感があふれています」

  「しかしその臨場感を得るためには、読者にもイメージを立ち上げる読解力が要求される。小説は作家と読者の共同作業で成立しているのです。多くの本を読むことでしかこのイメージを喚起する回路は開きません」 

  最後に篠田さんは、14世紀のイタリアの修道院を舞台にしたウンベルト・エーコの『薔薇の名前』が、いかに政治、宗教、欲望など普遍性を帯びた問いを発しているかを論じて締めくくった。 

  「共感から始まり根源的な理解に至る力を小説が持っていることを知ってほしい。字の数が多くて嫌だなと思っても、具体的なシーンを想像できるようになると小説を読むのが楽しくなります。大好きな作家を見つけて読破して、その上で様々な分野のものもぜひ読んでください」

(2008/02/05) 

setsuko_shinoda.jpg篠田節子(しのだ・せつこ)
作家。『ゴサインタン』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞。国際政治、宗教、音楽、ホラーなど幅広いジャンルで話題作を発表している。 

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