21世紀活字文化プロジェクト

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読書教養講座

2008/02/05

「ようこそ書店へ」in 国士舘大

■出演
田口久美子さん(ジュンク堂池袋店副店長)

  「学生に読書の喜びを知ってもらい、本好きを増やそう」と、活字文化推進会議と大学が共同で読書教養講座を始めて3年。各大学ともカリキュラムに工夫を凝らしているため、学生の評判は上々で履修生も年々増えている。
  作家の篠田節子さんが先月に青山学院大学(東京・渋谷区)で、カリスマ書店員として知られる田口久美子さんが昨年11月に国士舘大学(東京・町田市)で行った特別授業をのぞいてみた。

首都圏西部大学単位互換協定会 読書教養講座 一般公開授業

基調講演

時代の文化を映す鏡

  書店は文化を映す鏡です。きれいに磨かれていれば、その時代の空気を鮮明に伝えることができます。

20080205b_01.jpg  私が勤めていた1980年代当時のリブロ書店(東京・池袋)は、業界の風雲児と呼ばれていました。全国からやってくる学生や知識人、芸術家とその卵たちで、熱気にあふれていました。浅田彰さんや中沢新一さん、上野千鶴子さんなどの講演会も毎回大盛況でした。

なぜそんなことになったのでしょうか。書店の書棚は担当の書店員が作ります。原則として例えば芸術という大きなジャンルの中に、音楽、美術、工芸と分類していきます。

  ところがリブロは、通常のジャンルをすべて壊して新しいくくりで書棚を作りました。「アメリカ」という書棚には、アメリカに関連する思想、文学、政治、美術、風俗など、本来は別々の場所にあるべき本を一緒にしてしまいました。書店員が自分の視点で「現在のアメリカ」を書棚に表現したのです。

  ジャンルにとらわれずに知を組み替えようというポストモダン思想が流行していました。村上春樹がスコット・フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーらそれほど知られていなかったアメリカの作家を精力的に紹介していました。リブロは確かに、80年代という何らかの予感に満ちた熱い季節を象徴する存在でした。

  リブロのような書店はもうなくなってしまいました。書店員が独自に棚作りをすれば、同じ店の色々な場で同じ種類の本が売られることになり、販売点数が減ってしまいます。現在の書店は、お客さんが欲しい本を、いかに効率よく見つけ出せるかという、検索システムの優劣で競争しているといえるのかもしれません。

  私は今、文芸書の書棚を担当していますが、ネット書店アマゾンが上陸した2000年ごろから、小説も大きく変容したように思います。ケータイ小説が大量の読者を獲得するようになりました。千葉県の書店員が書いたポップから火がつき『白い犬とワルツを』が大ベストセラーになりました。

  雑誌も含めた出版物売上高の上位をセブンーイレブン、アマゾン、ブックオフなど書店以外の業態が占めています。流通形態とともに本の内容もさらに変わっていくのでしょうか。

  ともかく私は、どんな形であれ本が読み続けられることを願っています。それはここにいる若い皆さんがどのように本とかかわっていくのかにかかっています。

(2008/02/05)

kumiko_taguchi.jpg田口久美子(たぐち・くみこ)
ジュンク堂池袋店副店長。リブロ書店勤務時代、独創的な書棚作りで話題を集める。著書に『書店風雲録』『書店繁盛記』。

 

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