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成毛眞の新読書スタイル

2013/12/09

おすすめの本(10)『ふるさと銀河線 軌道春秋』

高田郁/著、双葉社、630円(税込)

ふるさと銀河線.jpg高田郁さんといえば「みをつくし料理帖」。時代小説の大御所街道をばく進中の人気作家さんですが、実はコミック原案の作家としても活躍されていたのです。コミック版「軌道春秋」が世に出たのは2000年7月。好評を博した短編集を、あらためて言葉で紡ぎ直してくれたのが本作品です。

9つのお話の登場人物たちは決して幸せではありません。リストラ・老い・家出・介護・死別・挫折・中毒・アルツハイマー・「家」の重圧・・・重い現実の中で、それでも懸命に前に進もうとする人達が、わずかに光を放つ瞬間。車窓から見えるささやかな老夫婦の日常を見守る人々。生きていることを伝える為の白いソックス。駅の立ち食いソバを作り続ける祖父と、その背中を見つめる孫・・・

一瞬を見逃さず、見事に切り取ったポートレートのような風景が車窓に並びます。「今は厳しくても、遠い遠い先には必ず幸せが待っている。そう信じるからこそ、人は生きられる。」そんな著者のメッセージが温かく心に溶けていきます。人生の節目に行きあたった時、読み返してみたくなる、大切な一冊です。

アバンティブックセンター商品課                                                安西京子

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