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成毛眞の新読書スタイル

2013/12/11

おすすめの本(11)『それからのエリス―いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影』

六草いちか/著、講談社、2625円(税込)

それからのエリス.png森鴎外の名作『舞姫』の主人公エリス、その正体をつきとめた『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』の続編。前作には本当に驚かされた。別の女性をエリスのモデルとしてNHKが放送した番組を見た直後だったので、なおさら驚いた。そして、今作は、鴎外と別れドイツに戻ったあとエリスは、鴎外の子どもを産み育てたのではないか? という衝撃的な仮説から調査が始まる。この仮説だけもう最後まで引っ張られてしまう。

文学研究という非常に地味なジャンルに属する本だろうが、調査の過程で関わる人々の描写や、その過程も回り道をしたり逆に急転直下の事態があったり、まるで推理小説のように面白いのでぐんぐん読み進められる。また、ベルリンの「森鴎外記念館」が実は鴎外が住んでいた部屋ではなかった、という事実も明らかにしていて、これもかなり衝撃的。

さて、結局エリスが鴎外の子どもを産んだという事実は残念ながら明らかにならなかったものの、(証拠は出なかったが、まだ可能性は残されていることから今後の展開にも期待してしまう)、エリスの写真の発見という大スクープだけでも十分前作同様の衝撃度だ。エリスとの悲恋において受けた心の傷が、鴎外の小説作品のすべてに通底しているように常々私は感じていて、それを裏付けるような二人の永きに渡る心の交流があったことが本作を読んで確認できたことは本当にうれしい。

鴎外の作品を改めて読みなおしてみようという気になった。そして日本文学史上屈指の名作でありながら、特に女性には頗る評判の悪い『舞姫』が再評価されるきっかけになればよいのにと心から思うし、鴎外の他の作品ももっと読まれるようになることを切に願う。

喜久屋書店心斎橋店                                                      辻中健二

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