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成毛眞の新読書スタイル

2013/12/17

おすすめの本(13)『金色機械』

恒川光太郎/著、文藝春秋、1680円(税込)

金色機械2.jpg遊郭を仕切る熊悟朗を、遥香という若い女が訪ねてくる。遊女になりたいために来た、という遥香の嘘を見破る熊悟朗。彼は人の嘘や殺気を視覚的に捉える能力を持っていたのだ。しかし遥香もまた「菩薩の手」と呼ばれる異能を備えていた・・・。

章を変えるごとに時を行きつ戻りつしながら進む物語は、時代小説でありながら、SFともファンタジーともとれる独創的なムードを湛えている。そのストーリーの中核に位置するのが「金色様」と呼ばれる異形の存在だ。全身金色で目は緑色の光を放ち、戦わせれば無敵。あるときは、少年時代に熊悟朗が加わることになる山賊集団「鬼御殿」の守護神。あるときは治外法権の存在「幽禅家」の一員。そして今は、遥香とともに。

この物語に引き込まれるのは、全十章の間に年代と主人公を変えながら進む構成に、その秘密がありそうだ。波乱に満ちた少年少女たちの生き様に固唾を飲みながら読み進めると、その存在意義を変えながら登場する金色様。少年少女たちはやがて悪に染まり、あるいは復讐心に燃え、人を殺め、殺めた過去に苦しめられ、やがて出会うべくして出会うことになる。物語の中に見えつ隠れつする金色様は、ときに神様と崇められているが、単純に超越的な存在としては描かれていない。殺し合いの歴史とも言える人々の中に放り込んだ、この異形の存在に作者は何を託したのか。そいて私たち読者は何を見出すのか。ジャンルの好き嫌いにとらわれず読んでいただきたい作品だ。

三洋堂書店ブロックリーダー                                                  平田知樹

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