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成毛眞の新読書スタイル

2013/11/05

おすすめの本(2)『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』

渡邉格/著、講談社、1680円(税込)

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」.jpg

もしも本屋大賞にビジネス・ノンフィクション部門があったなら、間違いなく投票したくなる程読みやすく、胸が熱くなるビジネス本。それが『田舎のパン屋が見つけた「腐る」経済』(渡邉格著 講談社)です。著者は岡山県真庭市勝山でパン屋タルマーリーを営むご主人。さすがパン屋さんとばかりに、この本には1冊で幾通りも美味しく召し上がれる要素がございました。

著者がどん底からパン屋になると決めて今に至るまでの半自伝、パン屋ならではのパンや発酵、新商品開発の話、そしてタイトルのパン屋から見る「経済」の話…と分かりやすい文章で、盛り沢山の内容が語られています。

一見、良い響きに聞こえる言葉『腐らない経済』。利潤を増やそう増やそうと追求し腐らないお金のためにどんどん増えていくが、そこから生まれる『腐らない』食べ物により『食』や『人』の価値は下がっていくという…ああ最も!と膝を打ちたくなりました。これはサービス業に携わる人間にとって目を向けずにはいられない内容です。パン屋「タルマーリー」のパンのように、現状のまま考えを懲り固めてしまわず『腐る経済』を意識してみれば、未来がパンのようにふわっふわに“明るく”膨れ上がるのではないのかと、希望を抱きたくなるからです。

本書を読んでから実際に作中に出てくる『和食パン』を取り寄せ、食べた時の感動は忘れられません。こうして言葉にするだけで涎が溢れてくるパンは、今まで食べたことのない風味と触感、体にすんなりと入ってくるような優しい味わいで『腐る経済』理論の正しさを裏付ける何よりもの“答え”でした。おそらく、この本を読んだ人は必ず何度も何度も読み返し、時には著者と共に悩み、泣き、喜びを分かち合うことでしょう。そして食べたくなるはずです。『腐る経済』から生まれたタルマーリーのパンを、大切な人と一緒に。

宮脇書店本店
藤村結香

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