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成毛眞の新読書スタイル

2014/01/20

おすすめの本(21)『独裁者のためのハンドブック』

ブルース・ブエノ・デ・メスキータ、アラスター・スミス/著、亜紀書房、2100円(税込)

独裁者のためのハンドブック.jpg『もし仮に、あなたが近い将来独裁者になることを夢見たとして、本書はあなたの最良の友となるってくれるだろう。少なくとも、隣人である親友以上に』。タイトルをストレートに受け取るとそういうことだ。が、このネーミングは当然皮肉である。

皮肉ではあるが、第一章から第十章まで、読者が完成された独裁者となることを前提に文章が進む。『権力の掌握破綻・死・混乱というチャンスを逃すな』〜『財政 貧しい者から奪い、富める者に与えよ』〜『公共事業 汚く集めて、きれいに使え』〜『賄賂と腐敗 見返りをバラ撒いて立場を強化せよ』と続くのだが、ここまでくると、もう独裁者に言及しているのか、その他機構に言及しているのか、よくわからなくなる。それもそのはず、著者の提唱する理論(権力支持基盤理論)によると、統治様式やコミュニティの大小に関わらず、この世の権力には法則があるらしい。そして、この権力構造の把握こそが著者の本当の狙いであり、本筋なのだ。

世に名を馳せる100人の独裁者からの教訓は、権力基盤が安定し、経済が活性化しているときほど、癒着や腐敗は横行する。さて、今の日本は、企業はどうだろう?ワーキングプアやブラック企業、いじめと呼ばれる問題は、独裁政権下ではどの序列にあたるのだろうか?

断っておくが、本書の分類はサブカル書ではなく政治学である。人の手が複雑に加えられ、わかりにくくなった今の政治に、『金』と『仲間(同志)』という、たった二本の補助線を引くだけで読みやすく理解しやすくした功績は大きい。政治離れが叫ばれる昨今、「政治を学ぶのも悪くない」とニヤリとさせる、良書である。

くまざわ書店鶴見店                                                       金子圭太

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