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成毛眞の新読書スタイル

2014/01/23

おすすめの本(22)『人間臨終図鑑 1〜4巻』

山田風太郎/著、徳間文庫、720円(税込)

人間臨終図鑑.jpg初めて読んだ十代の時、今にして思えば「かっこつけ」だった。なんとなく、同級生が読んでいなさそうなもの、と思った。二十代、徳間文庫で新版が出た。父親の書棚ではなく、自分の書棚にあってもいいか、と思った。改めて読んでみた。十代の自分と二十代の自分に十年弱の開きはあるが、まるで別の本を読んでいるようだ。こんな本だったのか、と驚いた。しかし旧版と新版の違いがあるとはいえ、内容が変わるわけもない。

十年間で変わったのは私だ。「かっこつけ」で本を読んでいた私は、十年後、本を売る仕事に就いている。相変わらず本を読んでいる。私は間もなく三十代となる。十代の頃はそんな自分をまるで想像できなかったし、しなかった。確かに漠然と、それでも本は読んでいるだろう、とは思っていた。

しかし、父親の書棚から拝借した「人間臨終図巻」を読んでいる私がどんなに想像力をたくましくしても、間もなく三十代の私が同じ本を読んで涙している図は思い描けないだろう。こればかりは二十代で自分の「人間臨終図巻」を読み驚いている私でも、想像できないはずだ。私自身なぜ涙したのか分からない。だが、自分よりずっと若い人々が死んでいっているという、考えてみれば当たり前のことには間違いなく胸を衝かれた。

例えば二十七歳、円谷幸吉。私が数年前に過ぎた二十七歳の年、東京五輪銅メダリストの彼は命を断った。今から六年後、五輪は再び東京で開催される。私は三十代を折り返している。何をしているだろう。恐らく本を読んでいる。自分の文章を思い出し「人間臨終図巻」を書棚から引っ張り出しているかも知れない。その時どう想うのか、何に胸を衝かれるのかは、今の私ではやはり想像がつかない。

大垣書店京都ファミリー店                                                   新妻直美

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