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成毛眞の新読書スタイル

2014/02/10

おすすめの本(27)『翔ぶ少女』

原田マハ/著、ポプラ社、1575円(税込)

飛ぶ少女.jpgこの小説の発行年日は2014年1月17日。1995年1月17日午前5時46分52秒、『阪神・淡路大震災』が起き兵庫県を中心に近畿圏広域が甚大な被害を受けました。「翔ぶ少女」は著者の“決して忘れない”という想いを刻みこの日に発行されたのです。

1995年、神戸市長田区。小学一年生の少女・丹華(ニケ)は兄の逸騎(イッキ)、妹の燦空(サンク)とともに何が起きたのか分からず恐怖に震えていた所を、医師のゼロ先生こと佐元良是朗に助けられた。父は即死し、母はゼロ先生に子ども達を託し炎の中に包まれてしまう。両親を亡くした3兄妹は先生の元で暮らすことに。ゼロ先生を中心とした新しい家族のなか、持ち前の明るさで街の復興と歩みを合わせるように成長していく丹華。だが彼女は震災孤児ということでクラスから孤立し、片足に残った障害のためにうまく歩くことが出来ない。兄の逸騎と炊事当番をこなし、ゼロ先生らと共に仮設住宅のお年寄りを訪ね笑顔で癒していく彼女は学校では辛い思いをしていた。けれど、決して泣かない。泣けない。そんなある日、彼女の体にある変化が起きる。それは思春期特有の変化なのか、それとも?仮設住宅で暮らす人々との交流、別れ、新しい出会いと初恋、そして決意。丹華は愛する家族のため、そして自身の未来のために勇気をだして強く羽ばたこうとする!

生きて生きて生きぬくんや!まるで『サモトラケのニケ』のような名を持つ少女・丹華。勝利の女神の名前を持つ彼女は優しく強い少女ですが、大いに悩み苦しみながら生きていきます。あのとき、どれだけ多くの丹華達が懸命に生きていたのでしょうか。著者は作家になった時からこの物語を構想していて、書き始めた時に東日本大震災が起きたそうです。せめて小説の中だけでも奇跡を起こしたいという想いが深く伝わってくる作品です。老若男女問わず読んでほしい。そして色々考えてほしい。そんな想いを込めてお薦め致します。

宮脇書店本店                                                           藤村結香

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