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成毛眞の新読書スタイル

2014/03/14

おすすめの本(35)『日日是好日』

森下典子/著、新潮文庫、520円(税別)

日日是好日.jpg知る人ぞ知るロングセラー書である。この地味で慎ましい書物が2002年の単行本刊行いらい、2008年の文庫化を経て、いまだに現役で版を重ねていることは、昨今の出版事情の厳しさを考えれば快挙といってよい。それだけこの本の価値を認める人がいてくれるのだと思うと、それだけで私は「日本もまだまだ捨てたものではない」といいたくなるほどである。そういいたくなるほどの、これは極上の名著なのである。とにかく懐の深い本なので、いろいろな読み方ができる。茶道エッセイとして、また一人の女性の成長物語として、あるいは自己と自然が一体になったときの驚嘆や悟りの境地を教えてくれるスピリチュアル本として等々。だがここでは、私は「学び」の本として本書をご紹介したいと思う。

著者はふとしたきっかけからお茶のお稽古に通い始める。しかし、こまかな作法ばかり多く、決まりごとで人を型にはめるようなお茶の世界になかなかなじめない。それでも良き先生に恵まれて、何年も続けていくうちに、やがて著者の内面に変化が起こる。多くの「気づき」が著者の心を豊かに満たし、いつしか茶道は、著者にさまざまな発見と成長のよろこびを与えてくれる、そんなかけがえのない存在となるのである。

「学び」に年齢など関係ない。そして、ただの勉強や学習ではなく、自分の「気づき」の体験を積み重ねることこそがほんとうの「学び」である。そのことを、著者はすこしも難しそうではなく、みずみずしく親しみやすい文章で感興豊かに伝えてくれる。そこがまた何ともすばらしい。

ここでさらに、もう一冊ご紹介してしまうことをお許しいただきたい。内田樹/著『先生はえらい』(ちくまプリマー新書)。語り口はまるで異なるけれど、じつはこの本も『日日是好日』とほとんど同じことをいっている。この2冊をセットでお読みいただければ、あなたの「学び」への理解はさらに深まることだろう。

くまざわ書店 四条烏丸店                                                   佐々木俊章

 

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