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成毛眞の新読書スタイル

2014/03/18

おすすめの本(36)『私の本棚』

新潮社/編、新潮社、1300円(税別)

私の本棚.jpgどうして書店員になったのですか、と聞かれることがある。答えは簡単。本が好きだからです、だ。もちろん世の中には書店員ではない本好きもいるし、本に興味のない書店員もいるだろう。単に本が好きで、関わる仕事がしたいというのなら出版社や図書館でもいいはずだが、他の職業を思い巡らせたことはない。なってみるまで考えなかったが、もしかするとこれは天職ではないのか、と思いながら、日々本に囲まれて仕事をしている。

しかし、最近思う。単に本が好きなだけなのか、と。無論、好きだ。そこは変わらない。だが、書店員仲間(ここには先輩も含まれるので仲間というには失礼かもしれないが、親愛と敬意を込めて)と話していて、あれなんだか違うな、と思った。まず私は文庫本を殊の外愛している。偏愛といっていい。文庫担当で幸せだ。新書も好きだが、今は担当から外れている。次に、どれだけ増えても家の床に本を積まない。未読の本のみ分かり易く積み上げている。読み終えた本は棚に並べ、時々並べ方を変え、好きな版元を集め、好きな作家を特等席に置き、それを飽かず眺めて過ごす。並べた時に高さが揃っており、また背表紙に統一感のある文庫は素晴らしい。家の本棚をにやにやしながら眺めるのと同じように、時折店の棚をにやにやしながら眺めている。

さてこの本である。文庫ではないが、文庫以外も好きなのだ。内容は非常に頷ける。家の床は抜けそうにないし、寄付もできないし、書庫を作ることは無理そうだ。だが、頷ける。そして単純に羨ましい。であるにも関わらず、ふと違和感を覚える。積み重なった本や、雑貨の置かれた棚。違う。こうじゃない。我が本棚を見る。文庫の背表紙がずらり。そう。これだ。一人目、小野不由美さんの書庫が最も好きだ。氏のファンだから、というだけでなく。整然と並んだ本。積み上げられもせず、並べた本を全て測って作った本棚だというから必ず一度は氏が手を触れているだろう。つまり、全てが自分の本だ。羨ましい。

読み終えたこの本をどこにどのように並べようか散々迷ってあちこち動かしているうちに、一つ心に決めたことがある。もしも、次にどうして書店員になったのですか、と聞かれたら答えを少し変えよう。次はこうだ。本と、本が並んでいる本棚が好きだからです、だ。そして私が文庫本を殊の外愛しているのは、乏しい小遣いでも買えた子供時代の愛着ももちろんあるけれど、本棚に並べた時に最も揃って見えるからなのだろう。いずれ「私の本棚」が文庫化したら、私はそれを私の本棚に並べ、にやにやしながら眺めるのだ。

大垣書店 京都ファミリー店                                                   新妻直美

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