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成毛眞の新読書スタイル

2013/11/15

おすすめの本(4)『ぼくのともだち―Maru in Michigan』

ジョンソン祥子/著、新潮社、1470円(定価)

ぼくのともだち.jpg アメリカのミシガン州に住む2歳の男の子、一茶くんと柴犬マルの交流の瞬間を切り取ったフォトエッセイです。

アメリカ人の父親と日本人の母親・祥子さんとの間に生まれた一茶くんの一番の友達は柴犬のマル。1作目の『ことばはいらない』では、無邪気な一茶くんにいたずらをされても決して動じないマルとの関係を暖かい母親の視線で撮った写真集でしたが、2作目の本書は、その関係を築くまでの日常を綴ったエッセイも入っています。

アメリカに渡って周りに友達がいなく、言葉も満足に通じず、夫しか頼れる人がいなかった一茶くんの母親・祥子さん。つらい毎日を送っていた時にようやくできた友達が子犬のマルでした。言葉が通じなくてもそっと傍にいて暖かく見守ってくれるマルに癒され、励まされ、異国の地で頑張っていこうと決心する祥子さんに、宿った一つの命。たくさんの励ましと暖かさをもらったマルの優しさを一茶くんに伝えるべく一緒の兄弟として育てる決心をします。

最初は全く近づかないマルと、泣き出してしまう一茶くんを、同じ愛情でつつんでいく両親。そしてその愛情はマルと一茶くんの間にも生まれてきます。泣いている一茶くんを本当の兄のように見つめるマル。いつしかマルの後を追いかけるようになった一茶くんの最初に覚えた言葉は‘マル’でした。祥子さんはこう綴ります。『マルは一茶にとって、初めてできた親友。成長している中で、楽しいことや、つらいことがあったとき、そっと一茶のそばに寄り添ってくれることでしょう。そして時が過ぎ、いつかマルが年老いて動けなくなったとき、たくましくなった一茶の腕で、抱き上げてあげる。そんなやさしさを、一茶はマルから学んでいる気がします。』

幸福な笑顔をファインダーに向けているマルと一茶くんの写真を見ていると、こちら側の心の中にすっと入ってくる暖かさを感じ、なぜだか涙があふれてきます。こんな友達が自分の傍にいてくれたら、どんなに心強いでしょう。このフォトエッセイ集は人と人との愛情だけではなく、いまこの時間を共に生きている全てのものを広く愛する心を教えてくれます。

ぜひいろいろなひとに手に取ってほしい一冊です。

八重洲ブックセンター本店
平井真実

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