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成毛眞の新読書スタイル

2014/04/11

おすすめの本(41)『御馳走帖』

内田百閨^著、中央公論新社、857円(税別)

御馳走帖.jpg先日より痛みがあった右の上の奥歯の治療をしに近所の歯医者に行き、右の上の奥歯は虫歯と診断されドリルで歯に穴を開けられた。「口を濯いで下さい」そのタイミングで果たして上の奥歯はどれぐらいの穴が開いているのだろうと舌で恐る恐る確認をし、結構大きく開けられてしまったなと思ったその瞬間、口の中でアルファベットを楽しむ内田百閧思い出した。

-----郵便や新聞を見終わる前に、ビスケットを齧って牛乳を飲む。これで朝飯を終わるのである。ビスケットは英字の形をした余りあまくないのを常用している。アイやエルは劃が少ないので口に入れても歯ごたえがない。ビイやジイは大概腹の穴が潰れて一塊になってゐるから口の中でもそもそする。さう云う色色の形を指先で選り分けて摘んで食べる。-----「百鬼園日暦」より

アイやエルやビイやジイに文句をつけつつもぐもぐ食べている大変クールな朝食の風景を歯医者の診察台で思っても痛みは軽減されることはないのだけど、もう頭から離れないからしょうがない。口の中のことなんて世の中いろいろもっとあるだろうにでもなんだってこんなこと思い出したのだろうと思い、では内田百閧ヘどの英字のビスケットなら好んで食べたのだろうと思いを飛躍させようとしたところ「次回は被せて終わりにしますから」と歯医者の先生に「はい」と答えてその日の治療は終わったのだった。ちなみに次回の診察で口の中→内田百閧ヨと繋がることはなかった。なんでだろう。

FUTABA+京都マルイ店                                                       清野龍

 

 

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