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成毛眞の新読書スタイル

2015/05/29

第7回対談 伝えベタに贈る「法則」 心を動かす言葉 誰もが作れる

ノンフィクションの書評サイト「HONZ」代表の成毛眞さんが話題の本の著者と対談する「成毛眞の新読書スタイル」。4回目のゲストにビジネス書『伝え方が9割〈2〉』(ダイヤモンド社)を4月に出版したばかりのコピーライター、佐々木圭一さんを招いた。66万部突破のベストセラーとなった『伝え方が9割』の第2弾。「伝え方で人生は変わる。それは誰もができる」と語る佐々木さんが発見した「伝え方の法則」とは――。

 成毛 ベストセラー『伝え方が9割』に続く第2弾『伝え方が9割〈2〉』が4月下旬から店頭に並び始めました。いま、なぜ「伝え方」が求められているのでしょうか。

 佐々木 2020年東京五輪の開催が決まったのは、前著が出版された2013年でしたが、僕はこの年が日本の「コミュニケーション元年」だったと思っています。フェイスブックやLINE(ライン)という新しいコミュニケーションが世界的拡大を見せる中、東京五輪のニュース。「お・も・て・な・し」といった流行語も誕生しました。伝えるのが苦手な日本人が国際舞台のプレゼンテーションで大勝利したことで、伝え方への関心が一気に高まったと思います。

 「いかにいいか」 

 成毛 日本人はなぜ、伝え方が下手なのでしょうか。

一氏.jpg 佐々木 良くも悪くも職人かたぎだからでしょう。いいモノを作って届ければ、認めてもらえるという信念があって、実際に世界のどこにも負けない技術力もある。だから、モノ作りに労力を注ぐ割には、それを伝えることには、さほど努力しないのが日本人です。でも、今の時代は、いいモノに加え、「それがいかにいいか」を伝えないと、人は動かないのです。

 成毛 2冊の著書はまさに、そうした伝え下手の日本人に伝え方の技術を伝授する内容になっている。

 佐々木 料理にレシピがあるように、伝え方にもレシピがあります。誰にでも人の心を動かす言葉は作ることができるのです。例えば、高級中華料理店のチャーハン。自分ではとてもその味は作り出せない。でも、調理法を示したレシピがあって、その通りに作れば、プロと同じとは言えなくても、近い味にまでもっていくことは可能でしょう。料理のレシピのように、伝え方のレシピがあれば、それを見た瞬間から自分のものにすることが可能になるのです。

 成毛 「コトバの法則」があるということですね。前著の『伝え方が9割』でも強調されています。

 佐々木 はい。『伝え方が9割〈2〉』では、前著で紹介できなかった三つの新技術を加えた「強いコトバ」を作るための技術と、頼み事の際、相手の「ノー」を「イエス」に変える「七つの切り口」を解説しています。自分の18年間のコピーライター経験から発見した誰もが使いやすくて簡単に応用が利く伝え方の法則を体系化しました。


「正反対」の力 

成毛眞氏.jpg 成毛 「コトバの法則」を発見したきっかけは。

 佐々木 大学院卒業後、マーケティングをやるつもりで広告会社に入社したのですが、突然、コピーライターに配属されました。元々、コミュニケーションが得意ではなかった自分は、書くコピーがことごとくボツになりました。当時、社内でつけられた僕のキャッチコピーは「最もエコでないコピーライター」。それは「紙の無駄」という意味でした。向いていない仕事に就いてしまった、と悩みました。それでも世の中の「いいな!」と思う言葉を手帳にメモして、どうやったらひらめくことができるのか考え続けました。3年くらいたった頃、いい言葉は構造が似ていることに気づきました。言葉の「法則」を見つけたのです。

 成毛 例えば、どういう言葉でしょう。

 佐々木 柔道の田村亮子選手が言った「最高で金、最低でも金」。映画「燃えよドラゴン」でのブルース・リーのセリフ「考えるな、感じろ」。ピカソの「全ての創造は破壊から始まる」。どれも名言ですが、それぞれ正反対の意味を持つ語が組み合わさっていることに気づいたのです。応用してみるとするなら、例えば、「好き」と言うにしても「嫌いになりたいのに、あなたが好き」のほうが強い。おいしいコーヒーを表したいなら、「おいしいコーヒーですね」よりも「うちのオフィスのコーヒーがまずく感じるくらい、おいしいコーヒーですね」のほうが強い。正反対の言葉を用いて強いエネルギーを作り出す「ギャップ法」という技術に気づいたのです。

 成毛 その発見で仕事ぶりは変わりましたか。

 佐々木 はい。徐々にではなく、がらりと変わりました。「法則」に気づいた後、書いたのが「言えないから、うたが生まれた」。Mr.Childrenの曲「君が好き」のキャッチコピーです。「言えない」というネガティブな語と「うたが生まれる」というポジティブな語を合わせた構造です。コピーの賞を初めていただくことができました。


数字を入れる

成毛眞の新読書スタイルお薦め本.png 成毛 SNSなどのネットメディアで誰もが情報発信ができる現在、特に小規模ビジネスは伝え方次第で売り上げが倍にも3倍にもなるはず。私自身はあまりビジネス書を読まないのですが、この本はお金もうけに直結するな、と思いながら、真剣に読んでしまいました。読者からの反響はどうですか。

 佐々木 一番多いのは「本の通りにやったら、デートに誘えました」というもの。本の中では、誰かをデートに誘う場合、「今度の土曜日空いていませんか」ではなく、「めったに予約の取れないお店が、次の金曜か土曜日だったら取れるんですが、予定はいかが」と伝えるように勧めてます。後者のほうが成功率は上がりそうですよね。

 成毛 「伝え方」の技術の中で一番のお薦めはどれでしょう。

 佐々木 『伝え方が9割〈2〉』で初公開した「ナンバー法」ですね。数字を入れることで説得力を強め、注目させる方法です。例えば、発明王エジソンの「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」。元々「天才とは、わずかなひらめきと膨大なる努力である」という意味で、それだけでも素晴らしいけど、「1%」「99%」という数字がなければ世界的な名言にまではならなかったはず。この本のタイトル『伝え方が9割』も同じ技術を使っています。元々「伝え方が大切」という意味の言い換えですが、そのタイトルでは、書店でなかなか手に取ってもらえないでしょう。

一氏.png 成毛 佐々木さんのお薦めの本を教えて下さい。

 佐々木 本田健さんの『人生を変えるメンターと出会う法』ですね。どうやったら人生を変えるような人に出会えるか、ということに加え、たとえ自分の上司がどんな人であっても、そこから学べることはあるのだということを教えてくれます。

 成毛 「活字離れ」と言われていますが、何かご意見は。

 佐々木 いいのか悪いのかは別にして、いまの時代、長い文章は読まれません。世の中の活字離れを嘆くのではなく、活字に携わる人たちが、世の中の求めている形でビジネスをすることもあっていいのではないでしょうか。例えば、日曜版などで、一つひとつの活字が2倍ほど大きな新聞、2ページを1分程度で読むことができるようなものを作るとか、大胆なチャレンジをしたら、面白くないですか。

◇ささき・けいいち 1972年、神奈川県生まれ。コピーライター、作詞家、上智大学非常勤講師。同大大学院卒業後、博報堂を経て、2014年、広告制作と人材開発を手がける株式会社ウゴカスを設立。欧米の広告賞など内外50以上の受賞歴がある。「伝え方」をテーマに企業・大学で行った講演は150回を超える。
◇なるけ・まこと 1955年、北海道生まれ。早稲田大学ビジネススクール客員教授。元マイクロソフト日本法人社長。著書に『面白い本』(岩波新書)、『ノンフィクションはこれを読め!』(中央公論新社)、『メガ!―巨大技術の現場へ、ゴー』(新潮社)など。最新刊に『情報の「捨て方」』(角川新書)。


主催 活字文化推進会議  主管 読売新聞社  協賛 ダイヤモンド社

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