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成毛眞の新読書スタイル

2013/11/29

おすすめの本(8)『文字の食卓』

正木香子/著、本の雑誌社、1890円(税込)

文字の食卓.jpg端正なものに憧れる傾向は歳のせいか、趣味の問題か。例えば「端正」なんて棚はどうだろうかと何の脈略もない本をその括りで実際に棚に並べてみたい、それがいい、それがしたいのだと考えたり、あの本をあの本の隣に並べ、二人の著者の距離を縮め、今までなかったものをそこに生み出したいと思ったり。あっ、本棚の話です。何を読んでもどこかで棚になるネタを探してしまうのはきっとこの職業の病みたいなものでしょう。

そういうぼくがこの本を手に取った理由は明快。ページを繰ったときにある二人の作家の名前が通り過ぎたから。やられたなと思った。というのも二人の本を並べて置いたらさぞ端正な棚ができるだろうなと思っていたから。ぐずぐずしているぼくを尻目に突然紙の上に二人は並んで現れてしまった。堀江敏幸と吉田篤弘。

二人のほとんどの本には共通の書体(精興社書体)が使われていて、その書体があの作品世界といかに共鳴しているかが著者自身の思いで簡潔に提示してある。著者が書体から二人に迫ったことをぼくは自分の思いを込めて「本」そのものから二人に迫りたかったのだった。『文字の食卓』が帯文で謳う“世界にひとつだけの書体見本帳”のように世界にひとつだけを棚で謳うことができればうれしいのだけど…、いつかそんなことができるように明日からは思ったことをまず実行に移すことから始めてみよう。

FUTABA+京都マルイ店                                                     清野龍

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