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成毛眞の新読書スタイル

2013/12/03

おすすめの本(9)『偽りのスラッガー』

水原秀策/著、双葉社、定価:730円

偽りのスラッガー.jpgプロ野球のスター選手、秋草隼。球界屈指のスラッガーと言われた彼だったが、プレー中の事故で怪我をし、引退を余儀なくされていた。だが彼は現役の夢を諦め切れず、同棲相手の仕事を手伝い、リハビリとトレーニングを続けながら日々を過ごしていた。

オファーが無いまま4年が経ち、復帰を断念しかけていたある日、大学の先輩でもある旧知の球団GM・栗林から誘いがくる。ブランクも長くなり、スタッフとしての依頼であろうと思っていた秋草だが、栗林からの要請は「選手」としての復帰だった。不安を感じつつも、喜びを隠せない秋草。しかし、怪我をした、もう若くはない選手が、ただ現役に戻れるわけはなかった。秋草の選手としての復帰はカモフラージュ。裏にある本当の理由。それは、現在のスター選手・立花にかけられた、ドーピング疑惑の調査だった…。

調査員と言いながら、実質は選手の中に紛れ込んだスパイ。選手として試合に出つつ、疑惑の周辺を探る秋草。こそこそ嗅ぎ回るような行為に嫌気を覚えつつも、選手契約のために必死に調査を続ける。立花を調査するにつれて、関係者や他の選手からもドーピング絡みの疑惑が浮上し、事態は思わぬ方向へ進展を見せる。

悩みながらも、次第に自らの意思で真実を求めていく秋草。

ドーピング疑惑の裏に、ある想いを秘める立花。

その周辺で複雑に絡みあっていく、関係者達の利害関係。

野球を題材にしていますが、充分な読みごたえを持つミステリー作品です。著者は、デビュー作『サウスポー・キラー』で、このミステリーがすごい!大賞を受賞している実力派。

もちろん、ストーリーの合間合間に入る野球の試合の場面も、緊迫感があり楽しめます!少し暗そうな設定ですが、読後感は爽やか。文庫になっているので、気軽に手に取っていただきたい作品です。

紀伊國屋書店新宿本店                                                     梅田武徳

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