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成毛眞の新読書スタイル

2013/11/13

おすすめの本(3)『見えない糸―物乞いの少年とキャリアウーマンの小さな奇跡の物語』

ローラ・シェロフ、アレックス・トレスニオゥスキ/著、関美和/訳
海と月社、1,680円(税込み)

見えない糸.jpg

上質なスーツを着たキャリアウーマンと、汚れたスウェット姿の少年が、マクドナルドで向かい合い座っている。誰が見ても、おかしな二人だ。ビッグマックを頬張る少年・モーリスと、同じものをトレイに載せたローラとの会話はぎこちない。

少年は11歳の物乞いだった。

この奇跡のように輝かしい出会いは、80年代のニューヨークで本当にあったことである。その証拠に、巻末にはローラとモーリスの幸せそうな写真が掲載されている。

モーリスはローラと出会い、たくさんのものをもらった。焼きたてのクッキーや、清潔な洋服や、憧れの自転車を。劣悪な家庭環境の中で、ローラとの毎週月曜日の待ち合わせは、彼にとって次第に大きな意味を持ち、それはローラにとっても同じだった。モーリスに与えているようでいて、彼女はそれ以上のものを彼から受け取っていたのだ。目に見えない、しかしとても大切なものを。子どもとはいえ、人間ひとりを本当の意味で助けるのはとても大変なことだ。そして世界中には、悲しいことにモーリスのような貧しい少年がたくさんいる。ひとりの人間が彼ら全員にビッグマックをごちそうすることは到底不可能である。しかし、だからといって目の前で手を差し出す少年が見えないふりをするという選択肢は、彼女にはなかった。

 ローラとモーリスは「見えない糸」によって導かれ、お互いのために出会ったのだ。どうか、ひとりでも多くの人が、この本と「見えない糸」でつながっていますように。

三省堂書店有楽町店
新井見枝香

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