三省堂書店 内田剛さん推薦!
「淳子のてっぺん」(唯川恵 著)幻冬舎

 『肩ごしの恋人』で直木賞を受賞して一五年。唯川恵といえば誰もが知る恋愛小説の名手である。そのイメージは一変。新作は実在の世界的登山家・田部井淳子氏をモデルにした臨場感満点。間違いなく今年の「てっぺん」レベルの長編小説だ。生前から田部井氏を敬愛し晩年を寄り添うように取材して、世に出されたこの作品は著者の魂が込められた特別な凄みが感じられる。

 男性だけの愉しみであった登山の世界にひとり飛び込み、様々な葛藤と懊悩を繰り返しながら困難を乗り越え、女性初のエべレスト登頂を果たす。昭和の時代の空気を色濃く再現しながらこの功績の光と影の部分を余す所なく描き切っている。

 山の頂への長き道のりは人生そのものに例えられるが読後に見える絶景は本当に美しく素晴らしい。とりわけ陰日向に主人公を支える伴侶の姿が印象的。「てっぺん」の意味を知ったとき身も心も熱くなった。

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