【私のオススメ本】
キリンビール横浜工場長 神崎夕紀さん推薦!
「置かれた場所で咲きなさい」(渡辺和子 著)幻冬舎

◆努力続けるしかない 
 首都圏の生産拠点・横浜工場(横浜市鶴見区)で昨年3月から工場長を務めています。1992年に医療機器関連メーカーから中途入社し、最初は福岡工場に勤務しました。当時は、女性が男性と同じように働く時代ではなく、最初は「お茶くみをして」と言われることもありました。まずは実績を示そうと、担当した品質保証の仕事で包装や醸造など様々な部門に出向き、「自分ができること」を探しながら働きました。
 入社5年後、神戸工場新設に関われるチャンスが巡ってきました。品質保証だけでなく、原料の受け入れから醸造、排水処理までビール製造のあらゆる工程の方々と一緒に仕事をし、福岡工場での経験が生きました。その後は、横浜工場、栃木工場などで醸造部門を担当し、品質管理などを任されるようになりました。ビブリオバトル
 この本と出会ったのは、出版後間もない時期です。渡辺さんは教師時代の経験を交え、人としての生き方、他人との接し方についてつづり、「自らが咲く努力をするしかありません」と説いていました。最も印象深い言葉です。入社して20年。私は与えられた場所で勉強し、チャンスのために準備しておくことが大事だと考えて働いてきましたが、私の考えを、渡辺さんがきれいに言葉にしてくれているように感じました。
 その頃、私はキリンの研究所の副所長で、研究職の若手社員育成に関わっていました。「入社前のイメージと違う」「この仕事に向いていない」と悩む社員もいましたが、私はこの本の言葉を基に「目の前にあることを一生懸命やって力をつけることで、思わぬ自分の才能を発見できるよ」と語りかけました。
 会社では理不尽なことや頭にくることはたくさんありますが、腐らずに取り組めば自分の力になります。置かれた場所で咲く努力をするよう、会議や面談で社員に伝えていますが、私もそうあり続けたいと思います。
      ◇
 2012年に幻冬舎から出版され、200万部を超えるベストセラーとなった。18歳で洗礼を受けて修道女となった渡辺さんは、35歳でノートルダム清心女子大(岡山市)教授に就任。同大学長や理事長を長く務め、16年末、89歳で亡くなった。幸福に生きる心構えを説く多数の著書がある。

※9月28日付けの読売新聞神奈川県版にも掲載されています

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