2004年06月13日
友人との会話ヒントに〜奈良女子大で活字文化公開講座
普段と違う時間流れる
本や新聞などの活字文化を考えようと、12日に奈良市の奈良女子大記念館で開かれた「活字文化公開講座」(活字文化推進会議、奈良女子大主催)。直木賞作家の林真理子さんらが講演し、読書観などについての話題にも花が咲いた。
コピーライターを経てエッセーを書き、小説家になった林さん。本屋を営んでいた母親の影響で、子供のころから「ご飯を食べるみたいに本を読んだ」といい、「読書中は普段とは違う時間が流れ、別の時間を生きることが出来る」と強調した。
現在、5歳の娘の子育て中で、会場から寄せられた「我が子を本好きにするには」との質問には、「親が管理するのではなく、本だけ並べて読みやすい空間を作ったらいいのでは」と答えた。
一方、活字離れについて、鈴木広光・同大助教授(印刷史)は「本を読まないことだけが問題ではない。送り手側も、本でしか表現できない内容を持つ必要がある」と持論を展開した。
大和郡山市の主婦(49)は「作家らが1冊の本を作るのにどんな苦労をしているのか、想像しながら読むのも楽しいと感じました」と話していた。
質疑応答
ーータイトルはどうやって決めているのですか。
【林】 タイトルは大体自分で決めています。最近すごく成功したなと思うのが、『美女入門』ってananの連載になったんですけれども、まとまって単行本になるんですけれども、そのタイトルをつけるときに、都会的で、中の本の内容も言いあらわしている何かいいタイトルがないかなと思って浮かんだのが『トーキョー偏差値』というタイトルです。我ながら最近の中でもいい出来だなと思います。
ーー小説を書くときに、最後の結末まであらすじを思い描いてから書いているのですか。
【林】 ケースバイケースですが、長編の場合は最初に結末を考え、それに向かって書きます。短編などは成り行き任せで書いていますが、長年の勘と経験と運がうまくミックスしているようです。
ーー自分の子供に対して林さんはどんな本や絵本を与えているのですか。その本の読み聞かせをしていますか。
【林】 福音館のゲレンデシリーズや、子供漫画、アニメなどが好きで、そういうものを読み聞かせています。今のところはそんなに特別なことはしませんが、私の子供だから本が嫌いなことはないと思っていますから。自分が本を読めるようになったら、ちょっとつっぱってくるのもいいのじゃないかな、とも思うんです。なぜかというと、子供がそろそろ自分の読みたい本がわかってきたら、それに親が絡んでいくのもどうかな、とも思うからです。以前、親子で同じ絵本を読もうという運動があったときに、作家の曽野綾子さんが「親子で同じ本を読むなんて何て嫌らしいんでしょう」とおっしゃいましたが、私も同じような気持ちです。本さえ並べておいて、ちょっとした空間をつくってあげれば大丈夫だと思います。
ーー 一番感動した本、影響を受けた作家は。
【鈴木】 意外かと思われるかもしれませんが、絵本です。版画家のおのきがくという人の『片足ダチョウのエルフ』という本です。内容は「ちょっと泣けるいい話」だったと思うのですが、タイトルが『片足ダチョウのエルフ』なので、普通はダチョウが一番本の表に出てくると思うんですけど、そのダチョウを苦しめる黒ヒョウが一番迫力のある絵で出てくる。その版画のすばらしさがすごく心に残っています。本といっても必ずしも内容ではなく、それ以外のところにもすごく引かれることがあります。心に残っているのはその本です。
【林】 子供のころ、よく文学全集を読んでいましたが、『レベッカ』とか『ジェーン・エア』とか『風とともに去りぬ』などをすり切れるまで読んでいました。こんな恋をしてみたい、こういうふうにドラマチックに生きてみたいというのが、そのとき植え込まれたみたいです。
(2004/06/13)