◆刑務所長と受刑者の信頼 関東大震災(1923年)の時、横浜刑務所では何が起きていたか―。元刑務官の著者が30年にわたる取材を通じて真実を追求したノンフィクションです。 監獄法(現・刑事収容施設法)では、天災時に受刑者らの収容が困難な場合は、典獄(刑務所長)の権限で24時間に限って解放することが
◆交流が生む異なる視点 東芝野球部時代は、練習場が近い東京都府中市で働いていましたが、38歳の時に異動が決まりました。自転車通勤から電車通勤に変わり、会社まで1時間ほどかかるようになりました。この時間が意外と長く感じ、せっかくなら本を読もうと考えて手に取ったのが、この本です。 物語は、暴力団の親
かつて横浜には「ハマのメリーさん」と呼ばれる娼婦がいた。全身真っ白で異様な姿。年老いて腰は曲がれどもその高いプライドは決して折れない。夜の繁華街に凛と佇む。昭和世代であれば、彼女の目撃談や都市伝説をひとつやふたつは語れるものだ。 そのメリーさんを題材に捉えた映画「ヨコハマメリー」が2006年公開
「私の中の情緒的な日本を書き留めておこうと思った」とは、カズオ・イシグロ氏の発言ですが、その情緒=日本人の心性は、日本の社会の中では互いの了解事項として、文化を形成してもいます。文化としての言外言語である様々な<しぐさ>は、如何なる日本人の心性の表れであるのか? グローバリズムが声高に志向され
「UWF」とは80年代、日本のスポーツ界に一大ムーブメントを起こしたプロレス団体の名称である。様々な雑誌が特集を組み、書籍が刊行され、地上波のテレビ局が特番を組み、試合はアイドルグループの全国ツアーのように野球場やアリーナで開催された。 団体自体は1990年に分裂・解散してしまうが、その活動は後の
女性として生きるということは、命を孕む可能性のある肉体を持ちながら、それこそが欲望の対象になりえるという現実に、たえず引き裂かれながら生きるということだ。 本書に収録された三作品のいずれにも、様々な女性が登場する。ヒモを自負する男のために身を立てる少女、「自由恋愛」の思潮のもと一つ屋根の下
エドワード・ケアリーに古屋美登里さん、読まないわけがない。しかもそれは汚物にまみれた世界で愛をさけぶ物語。恐ろしく凄まじく、悲しく切ない。 近頃はディストピア小説が注目を集めることが多い。ノーベル文学賞で話題のカズオ・イシグロ著『わたしを離さないで』もひとつの例え話。ありえるかもしれない
昨年本屋大賞を受賞した『羊と鋼の森』(文藝春秋)の著者・宮下奈都さんというと、人々の想いを丁寧に掬い取り静謐な物語を描く作者と、思い浮かべる方も多いだろう。しかし、本書はいささか趣を異なっているのかもしれない。 本書は全国の書店員はじめ大きな支持を得ている『スコーレNO.4』のスピン
読売新聞家庭欄の人気コーナー、「こどもの詩」。中学三年生以下の子どもたちが書いた詩を掲載するこのコーナーは、今年でなんと50周年。この『ことばのしっぽ』は、そんな50年間の精選集だ。 せきがえ(小野里奈・小1) きょう/せきがえがありました/一がっきつかっていた/つくえといすに/みんなにわか
『肩ごしの恋人』で直木賞を受賞して一五年。唯川恵といえば誰もが知る恋愛小説の名手である。そのイメージは一変。新作は実在の世界的登山家・田部井淳子氏をモデルにした臨場感満点。間違いなく今年の「てっぺん」レベルの長編小説だ。生前から田部井氏を敬愛し晩年を寄り添うように取材して、世に出されたこの作品は著者
活字文化推進会議や日本新聞協会などでつくる「学校図書館法公布70周年記念事業運営委員会」(事務局・学校図書館整備推進会議=日本児童図書出版協会内)は1月12日、学校図書館法公布70周年にあたる2023年を新たな契機に、学校図書館が自ら学び続ける市民の育成に大きく寄与することを願って、アピール文「私たちは学校図書館を応援しています」を発表しました。
アピール文では、子どもが読書を楽しみ、主体的な「学びの方法」を身につけるために図書資料の充実、学校司書の待遇改善などを訴えています。賛同者には作家の浅田次郎氏、今村翔吾氏らが名を連ねています。アピール文と賛同者一覧は以下のとおりです。
アピール
私たちは学校図書館を応援しています
学校図書館法公布70周年記念事業運営委員会
学校図書館整備推進会議
全国学校図書館協議会
文字・活字文化推進機構
アピール
私たちは学校図書館を応援しています
学校図書館法公布70周年の2023年を迎え、私たちは、学校図書館が学校教育に欠かせない基礎的な設備として、教育課程に寄り添い、子どもたちの人間的な成長を支えていることをあらためて確認したいと思う。
子どもたちはいま、1人1台のタブレット端末を持ち、瞬時に多様な情報を収集できる社会に生きている。そのようなネット時代に求められる新しい力は情報活用能力であり、その土台となるのが読書力である。
学校図書館は、子どもが読書を楽しみ、主体的な「学びの方法」を身につけるための最良の場所であり、生きる力を育む知の空間である。「読書」「学習」「探究」という多機能を持つ学校図書館が、その使命を果たすには、いつでもそこにいて、図書資料と子どもをつなぎ、各教科等の授業を支援する学校司書の充分な配置が必須の条件となる。
2019年には読書バリアフリー法が制定され、学校図書館は、また一つ新たに意義深い課題を抱えることになった。この法律の具現化にあたっては、活字文化の振興や読書活動推進にかかわる既存の関連法や諸活動を、読書バリアフリー法の理念に照らして整備・振興していく必要がある。
社会全体の急激なデジタル化の中で、学校図書館は読書力や言語力、課題解決能力を育てる観点から子どもの成長段階に応じた図書資料、新聞資料、デジタル資料、バリアフリー資料を整備しなければならない。
私たちは学校図書館法公布70年を新たな契機に、これからの学校図書館が生涯にわたって、自ら学び続ける市民の育成に寄与することを期待し、心から応援するものである。
2023年1月12日
アピール賛同者一同
アピール賛同者一覧
浅田次郎 作家
あさのあつこ 作家
阿刀田高 作家
猪木武徳 大阪大学名誉教授
今村翔吾 作家
内館牧子 作家
内田伸子 お茶の水女子大学名誉教授
宇野和博 筑波大学附属視覚特別支援学校教諭
長田渚左 ノンフィクション作家
小野寺優 日本書籍出版協会理事長
片山善博 大正大学教授
川島隆太 東北大学教授
河村建夫 文字・活字文化推進機構会長
隈 研吾 建築家
酒井邦嘉 東京大学大学院教授
佐藤 学 東京大学名誉教授
鈴木みゆき 國學院大學教授
鈴木善久 伊藤忠記念財団理事長
銭谷眞美 新国立劇場運営財団理事長
俵万智 歌人
寺﨑昌男 東京大学名誉教授
中江有里 女優、作家
野口武悟 専修大学教授
坂東眞理子 昭和女子大学総長・理事長
肥田美代子 童話作家
堀川照代 放送大学客員教授
丸山昌宏 日本新聞協会会長
宮西達也 絵本作家
村山由佳 作家
柳田邦男 ノンフィクション作家
敬称略・50音順・2023年1月12日