かつて読んだ名作の新訳版が出版されると、懐かしさも相まってついつい再読してしまう。『一九八四年』で有名なジョージ・オーウェルの一つの代表作であるこの『動物農場』もそんな作品の一つ。 悪政者の人間農場主ジョーンズを追い出した動物たちは、すべての動物たちは平等であるという理念を掲げ「動物農場」を設
この本の発行が2011年7月というのだから初めて読んだのは6年前になる。一読して衝撃だった。イッキ読みしながら、いったい何枚の鱗が目からこぼれ落ちたことだろうか。日頃の接客の仕事につまずくたびにも読み返してみる。けっして古びれない。志は高い。自分には出来ないながらも、唸ってしまう。ああ「この本は、
読中、まず日常にまつわるゴシップに浸る愉しみに満たされる。本作は2011年の震災をきっかけに、普通に日々を過ごす大学の女性職員や学生たち登場人物の日々を通じて、今までよりも身近になった「死」ということに、様々な問いや考えをそれぞれが著者を通じて表している。もちろん、その登場人物たちは、大なり小なり周
社会現象にもなった「ポケモンGO」より前に出ていた「イングレス」というオンラインゲームをご存知でしょうか?実は私、年甲斐もなく「イングレス」に夢中になっていた時期がある。 このゲームは「位置ゲー」と言われるスマートフォンのGPS機能を使ったゲーム。普通はゲームと言うと「インドア」な感じがどうしても
作家・大崎善生氏のデビュー作。29歳で夭逝した棋士、故・村山聖九段の生涯を描いたノンフィクション小説。2016年には松山ケンイチ氏の主演で映画化された。 幼少期、難病・ネフローゼとの闘病生活を送る病院で将棋に出会う。やがて棋士を志し、難関の奨励会を驚異的なスピードで駆け抜け17歳でプロ入りを果たす
冬になると読み返したくなるミステリー、子供の時からのシリーズもの、最近見つけた装丁の綺麗なSF単行本。好きな本は沢山あるが、老若男女どんな人にもおすすめするなら、人生のバイブルでもあるこの本しかないと思った。 子供にも読みやすい名作として知られ、多くの人が小さい時に一度は手にしたことだろう。しかし
『死んでいない者』で第154回芥川賞を受賞した滝口悠生氏の最新刊は、「お茶汲み当番」のローテーションが会議で定義されるような、ある小さな会社の日常からはじまる連作短篇集だ。連作はすべて離婚した妻の面影を断ち切れない男、市瀬の目線で綴られている。 滝口作品には土地の固有名詞がよく登場する。今作も例外
これは織田信長という人物を宣教師団と共に日本に訪れた船員の視点から描いた物語である。第三者それも織田軍団ではない一人の異邦人の視点から、信長とその周囲の人物たちの想いと行動が淡々と語られていくのだが、不思議と彼らの存在を鮮明にとらえることができる。冒頭にて語られているが、この本が南仏で発見された書簡