【私のオススメ本】茅ヶ崎市美術館学芸員 藤川悠さん推薦!
「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(伊藤亜紗 著) 光文社

  ◆五感で芸術楽しむヒント 
 私は学芸員として、美術館で展示作品を来館者と一緒に見ながら、目で見たモノを言葉に介し、想像力を膨らませながら楽しんできました。
 一方で、視覚だけでなく、五感を使って楽しめる作品がもっとあってもいいんじゃないか。音が出てもいいし、香りがしたっていい。そんな思いを抱くようになっていました。
 2014年からは、触れると振動したり、音が聞こえたりする作品を紹介する展覧会を企画しています。特に目の不自由な人を対象としたわけではありませんが、展覧会を開いているうちにこれならば視覚障害者も楽しめるんじゃないかと思えてきました。
 それでも、目の見えない人が美術館に来て本当に楽しむことができるのだろうかと不安を感じていた時、手にしたのがこの本です。
 美学と現代アートを専門とする筆者が、視覚障害者らへのインタビューをもとに彼らの空間認識や感覚の使い方、コミュニケーションの仕方などをユーモラスな文体で書いています。ビブリオバトル
 この本を読んだことで、視覚だけではない鑑賞の仕方や、他者との違いを認め、それぞれが自由に楽しんでもいいということを知りました。自分自身も、本に背中を押されたような気持ちになりました。
 16年には振動や光だけでなく、香りの出る作品なども展示しました。視覚障害者の方も大勢みえ、「病気で弱視になってから11年ぶりに美術館に来た」「盲導犬と一緒に楽しんだ」といった感想をいただき、うれしかったです。
 目が見える、見えないにかかわらず、作品を楽しめる機会を美術館という場でもっと増やしていけたらと思っています。
 
 光文社新書から2015年に出版された。著者は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授で、著書を通じて視覚障害者との対話から目の見えない人の「見方」に迫りながら、「見る」ことそのものを問い直している。茅ヶ崎市美術館では海岸で拾った石に触れると音がする特別展示「いしのこえ」を7月1日まで開催。入場無料。月曜休館。問い合わせは同館(0467・88・1177)。

※5月18日付けの読売新聞神奈川県版にも掲載されています。

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