全国中学ビブリオバトル代表、秋田・長野・福井・徳島でも決定

秋田…山田煌真さん、チャンプ本は「俺ではない炎上」

 中高生がお薦めの本の魅力を発表し、聴衆が最も読みたくなった本を投票で決める「ビブリオバトル県大会」(県教育委員会主催、読売新聞秋田支局後援)が23日、秋田市の秋田拠点センターアルヴェで開催された。地区予選を勝ち上がった高校生6人、中学生7人が身ぶり手ぶりを交えながら熱弁を振るった。

 高校生の部では、小野寺優さんの文芸書「ラノベ古事記 日本の神様とはじまりの物語」を紹介した県立秋田南高校の小玉柊乃華さん(1年)、中学生の部では、浅倉秋成さんの小説「俺ではない炎上」を紹介した県立秋田南高中等部の山田煌真(こうしん)さん(2年)が優勝した。高校生の決勝大会は来年1月28日に東京都豊島区の東京国際大学池袋キャンパスで、中学生の決勝大会は来年3月24日に滋賀県大津市の龍谷大学瀬田キャンパスで開かれる。

 ほかの入賞者は次の通り。(敬称略)
 【高校生の部】2位桜田雅(県立能代松陽1年)
 【中学生の部】2位杉山聖頼(三種町立山本3年)

中学生の秋田県大会を制した山田さん

緊迫感 抑揚つけ表現

山田煌真さん(県立秋田南高中等部2年)

 「ある日突然、殺人犯にされてしまったら、誰を信じ、誰に助けを求めますか」。そう問いかけ、発表冒頭から観客を引きつけた。

 

 小説「俺ではない炎上」は、SNS上で殺人犯と名指しされ、無実の罪を着せられた主人公の逃亡劇。真偽不明の情報が瞬時に拡散されるネット社会に翻弄(ほんろう)され、逃げ続ける主人公が味わう緊迫感を、抑揚をつけた声色で表現した。

 

 各所に張り巡らせた伏線を回収する衝撃の結末が待っているといい、「断言します。あなたはこの本を必ず2度読むことになる」と締めくくった。

 

 昨年の県大会で入賞できなかった悔しさを胸に、今大会に臨んだ。「全てをぶつけ、優勝できてうれしい」と喜びをにじませた。

長野…横沢たまきさん、チャンプ本は「ZOO」

 長野県内の中高生がお薦めの本の魅力を語る書評合戦「高校・中学ビブリオバトル長野県大会」(県大会実行委員会主催、読売新聞社後援)が23日、塩尻市市民交流センター「えんぱーく」で開かれた。高校部門は須坂高の清水陽和さん(1年)、中学部門は塩尻市辰野町中学校組合立両小野中の横沢たまきさん(3年)が優勝し、全国大会となる来年の決勝大会の出場権を得た。

ビブリオバトルの県大会で優勝した清水さん(左)と横沢さん

 高校部門は5校16人、中学部門は3校7人が参加。5分間で本を紹介し、質疑応答の後、聴衆らの投票で一番読みたくなった「チャンプ本」が選ばれた。

 

 清水さんは多様性をテーマにした「正欲」(朝井リョウ著)を取り上げた。登場人物の様々な欲求や性的指向を例に挙げ、「本当に多様性は認められていると思いますか」と聴衆に問いかけた。発表後は「物語の内容を言うだけでなく、興味を持ってもらえる説明を心掛けた」と振り返った。

 

 横沢さんは短編集「ZOO」(乙一著)から一人の男とロボットの物語を紹介。死や命について考えさせられる深い内容に「読むごとに描写の捉え方や感じ方が変わる。読み終わった後も楽しめる」と魅力を語った。決勝大会に向け、「苦手な分野の本も読み、視野を広げたい」と力を込めた。

 

 高校の決勝大会(特別協力・東京国際大学)は来年1月28日に東京都豊島区の東京国際大学池袋キャンパスで開催。中学の決勝大会(同・龍谷大学)は3月24日に大津市の龍谷大学瀬田キャンパスで行われる。

福井…山本哲平さん、チャンプ本は「六人の嘘つきな大学生」

 中学生がお薦めの本の書評を競い合う「福井県中学生ビブリオバトル」(県教育委員会主催、活字文化推進会議共催、読売新聞社後援)が23日、福井市の福井県立図書館で開かれ、県立高志中2年山本哲平さん(14)が最優秀賞に選ばれた。山本さんは来年3月に滋賀県で開かれる全国大会に出場する。

 県内の中学生12人が参加。市民ら約40人を前に5分間で愛読書の魅力を紹介し、観客からの質問に答えた。

 

 山本さんは「六人の嘘(うそ)つきな大学生」(浅倉秋成著、KADOKAWA)を紹介。有名IT企業の最終選考に残った大学生6人の間で話し合って内定者1人を決めるミステリー小説で、「脳がぐらんぐらんとする展開で、意外な一面は誰にでもあることに気づく」と身振りを交えながら話した。

 

 3月に行われる全国大会について「この本をお薦めする気持ちで、多くの人に魅力を伝えたい」と意気込みを語った。

 

 優秀賞には、「変な家」(雨穴(うけつ)著、飛鳥新社)を紹介した南越前町立南越前中3年山際隼介さん(15)が選ばれた。

徳島…武市渉さん、チャンプ本は「塞王の楯」

徳島県「中学生の部」で優勝した武市さん

 好きな本の魅力をアピールして書評の技術を競う「徳島県中学生・高校生『書評合戦』」(県教育委員会など主催、読売新聞社など後援)が19日、徳島県板野町の県立総合教育センターで開かれた。4人が出場した中学生の部では、徳島市国府中2年武市渉さん(14)が、8人が争った高校生の部では、県立阿波高2年佐藤愛花さん(17)が優勝した。2人は来年開催される全国大会に出場する。

 

 出場者は5分間で「推しの1冊」を紹介。質疑応答を経て、全員が一番読みたいと思った本に投票する。

 

 武市さんは、今村翔吾さんの戦国小説「塞王(さいおう)の楯(たて)」を取り上げた。「最強の楯」の石垣と、「至高の矛」である鉄砲の両職人を描いた作品で、武市さんは「歴史には武将の活躍ばかりが残るが、職人たちも命がけで戦った。僕も自分にしかできないことを見つけようと思った」と訴えた。

 

 ビブリオバトルの中学生の全国大会は来年3月24日に龍谷大学瀬田キャンパス(滋賀県大津市)で開催される。

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