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イベント情報

2014/11/30

共立女子大学 活字文化特別セミナー/戸田奈津子さん

「活字文化特別セミナー」(共立女子大学、活字文化推進会議主催)が11月3日、東京都千代田区の共立女子学園共立講堂で開かれた。「第24回神保町ブックフェスティバル」の協賛イベントとして開催され、約1000人が参加した。「グローバル時代に求められる活字力――私の字幕人生」をテーマに、映画字幕翻訳者の戸田奈津子さんが講演した。戸田さんは共立女子大学の太田和子教授、福嶋伸洋専任講師、同学の学生3人を交えてのトークセッションにも臨み、読書を通じた日本語能力養成の重要性から英語学習法、ハリウッドスターとの交友まで幅広く語り合った。

 

主催者挨拶
共立女子大学学長・共立女子短期大学学長 
入江和生さん

MAI_0635.JPG 本学は再来年、創立130周年を迎えます。本学のある神保町界隈は古本屋街として世界的に有名ですが、大小の出版社の密集地でもあるので、新刊書の街としても世界一と言っていいのではないでしょうか。もちろん、活字の価値においては古いも新しいもなく、本学としては、非常な光栄と同時に責任を感じる次第であります。
大学におけるグローバル教育が叫ばれております。世界に飛び出せという意味になろうかと思います。しかし、足元を固めずにジャンプはできません。本日のセミナーが飛躍のための助走の力強い一歩となることを願っています。

 

基調講演

「グローバル時代に求められる活字力――私の字幕人生」 戸田奈津子さん

MOT_1273.JPG 長年、映画字幕の仕事をしていると、「英語がお上手なんですね」と、みなさんから言われます。でも、実際、この仕事は英語力よりも日本語力なんです。4分の3は日本語力だと思います。字幕の場合、長いセリフを逐語訳していくと、スクリーンが文字だらけになってしまいます。だから、セリフの間に読み切れる日本語にする。
映画を見る楽しみを妨害しない文字数は、1秒間に3、4文字程度。例えば、「“I love him more than she does.”」というセリフがあったとします。3秒程度だから8字、9字あたりでまとめます。「私は彼女より彼を愛している」では読み切れませんよ。ですから「私の思いが上よ」とか、「彼は私のものよ」とする。いつも日本語と格闘して、短く的確な言葉を探すことに専念しているというわけです。
日本人はお題目のように唱えます。「英語やらなきゃ。英語勉強しなきゃ」って。1945年8月15日の終戦時、私は小学生でしたが、極端な話、翌日から日本は変わりました。アメリカやイギリスを「鬼畜米英」と呼んでいたのに、「英語を学ばなきゃ」になったのです。いまも相変わらず英語。小学校から英語です。悪くはありませんよ。でも、日本は「英語、英語」を言うが余り、日本語が貧困化していませんか。映画会社からも「字幕にあまり漢字を入れると、若いお客さんが読めないから、やさしくして」という注文が来ます。「蝶蝶」なんて「ちょうちょう」と平仮名にする。1文字でも惜しいのに。漢字のみならず、表現力も貧しくなっていると思います。「戸惑う」を「迷う」にしてくれ、と言われることもあります。微妙なニュアンスの違いを表現していた言葉が切られていく。若い人は辞書を引かなきゃ。素晴らしい日本語を維持していく努力をしていかなければいけません。
最近、電車やバスでも若い人はスマホばかりですよね。でも、日本語力をつけるには本を読むしかないのです。いい文学作品を読むこと。速度は遅いけど、読めば、日本語の美しさを頭が感じ取って少しずつ身につくんです。何冊も読んでやっと日本語力が蓄積されていく。この時代、コンピューターがいくらでも情報をくれます。でも、情報は教養ではない。人間の価値を決めるのは教養です。自分で本を読み、考えなければ、教養は身につきません。

戸田奈津子さん(映画字幕翻訳者)
東京都出身。津田塾大学英文科卒後、フリーの翻訳などをしながら映画字幕翻訳の道を志す。1980年の話題作「地獄の黙示録」で本格的なプロとなり、以来、1500本以上の作品を手がけている。ハリウッドスターとの親交も厚い。主な作品に「E.T.」「スター・ウォーズ」「フォレスト・ガンプ」「タイタニック」「ラスト・サムライ」「アバター」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」。

 

トークセッション

「ことばの瞬発力」

MAI_0683.JPG【福嶋】 映画字幕翻訳というのは、1秒間に3文字程度という制約のなかで非常に凝縮された言葉を選んで瞬時にコミュニケーションをとる、そういうお仕事です。一方、若い人はデジタルの文字で瞬時にメッセージを理解する言葉のやりとりをしている。きょうはその是非を含めてお伺いしていきたいと思います。学生の方からどうぞ。
【野際(文芸学部4年)】 日本語力や語彙(ごい)力を高めるために、戸田さんがされてきた読書法ってありますか。
【戸田】 私の生まれた時代はテレビがなく、家にあった本を片っ端から読みました。乱読でしたけど、それでいいのでは。そのうちに自分の好みが分かってくる。後はそれに沿ったものを選べばいいかと。
【福嶋】 映画はいつ頃からご覧になりましたか。
【戸田】 戦時中は外国映画禁止。終戦後、私が小学校3、4年生の時に解禁されました。DVDなんてなくて何度も見られないから、映画の見方は非常にディープだったし、切ないこともありました。
【須田(大学院国際学研究科1年)】 私たちの世代は典型的女性語をさほど使わなくなったのに、字幕には「〜だわ」「〜かしら」が出てきます。どうしてでしょう。
【戸田】 映画は男も女も出てきて、かぶさるようにセリフを言うことがあります。誰がしゃべっているのかはっきりさせる意味があります。ニューヨークの現代映画なら女が男言葉を使ってもいいのです。どういう言葉にするかは、映画が決めるのです。
【福嶋】 文化研究をなさっている太田先生から何か質問はありませんか。
MAI_0724.JPG【太田】 16世紀頃から、活字文化を持った欧米社会が力を得て、文字のない社会はおとしめられていく状況がありました。でも、携帯やスマホの出現で絵文字などが使われるようになり、活字文化の位置づけが変化しているように思います。この状況をどう思われますか。
【戸田】 絵文字、面白いと思いますが、深い思想は伝えられないでしょう。瞬時にメッセージは伝わりますけどね。それに、みんながやっているから、別にしたくないのにやりとりをしているのではないのかしら。
【賀来(家政学部4年)】 私もLINEを使いますが、それがコミュニケーションツールの主流で、使わないと友だちと話せない雰囲気もあります。個人的には嫌なのですが。
【須田】 私もみんなが使っているからやっている一面は否定できないし、それに縛られ過ぎるのも良くないと感じてはいます。
【戸田】 そういうバランス感覚は持って欲しいですね。悪いとは言いません。でも、絵文字とスタンプですごい文学作品ができるかしら。
【福嶋】 戸田さんに英語学習法を聞きたいという方も多いと思います。秘訣(ひけつ)などあれば。
【戸田】 語学に近道はありません。読む、書く、聞く、話す、の四つの柱をきちっと立てていくこと。皆さん、会話力を一番つけたがるけど、必要に迫られれば絶対に話せます。むしろ基本的語彙(ごい)をたくさん覚え、文章を書くことが大切。
MAI_0696.JPG賀来 でも、書くのは時間もかかるし、なかなか勉強が進まないこともあります。
【戸田】 1日に1センテンスでいいの。積み重ねれば応用もできる。それから、自分の好きな分野の英語を選んで読むこと。

【福嶋】 海外のスターとの交流についてもお聞きしたい。
【野際】 たくさんのスターが来日されますが、皆さん日本好きなのでしょうか。

【戸田】 皆さん日本には好意を持っています。リチャード・ギアさんなどは本当の日本好き。京都が好きなのですが、金閣寺などには興味がなくて、朽ちているような寺に行きたがる。渋いもの好きで。
ただ、よく尋ねられるのですが、どのスターが一番ステキかという質問には答えられないのです。ベートーベンとモーツァルトをランク付けするようなものでしょう。
【太田】 では、一番印象に残った映画は。
【戸田】 それも困る質問で。
【太田】 では5本なら。
【戸田】 100本ならできるのですが。いい映画はたくさんありますから。

福嶋伸洋さん(共立女子大学 文芸学部専任講師)
東京大学文学部卒業。著書に「魔法使いの国の掟(おきて)――リオデジャネイロの詩と時」。専門はブラジルの詩と音楽。
太田和子さん(共立女子大学 国際学部教授)
津田塾大学卒業。シラキュース大学大学院修了。筑波大学、三重大学などを経て1992年から共立女子大学に勤務。専門は北アメリカ文化研究。

 

主催:共立女子大学、活字文化推進会議 主管:読売新聞社 後援:文部科学省 

 

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