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トップ >  イベント情報 > 学校図書館活用教育フォーラム 「本との出会い」手助け/児玉清さん、溝口善兵衛さん、斉藤和貴さん、村上恭子さん、安藤友子さん、小寺美和さん、水越規容子さん、前田稔さん、成田喜一郎さん

イベント情報

2009/11/04

学校図書館活用教育フォーラム 「本との出会い」手助け

■出演
児玉清さん(俳優)
溝口善兵衛さん(島根県知事)
斉藤和貴さん(東京学芸大学附属小金井小学校 司書教諭)
村上恭子さん(東京学芸大学附属世田谷中学校 司書)
安藤友子さん(元中野区立啓明小学校校長)
小寺美和さん(元町田市立成瀬台中学校 司書教諭)
水越規容子さん(元町田市立成瀬台中学校 図書指導員)
前田稔さん(東京学芸大学講師)
成田喜一郎さん(コーディネーター・東京学芸大学教授)

 読書によって考える力や豊かな想像力をはぐくもう――と「学校図書館活用教育フォーラム」が9月19日、東京都小金井市の東京学芸大で開かれ、全国各地から約300人の聴講者が詰めかけた。俳優の児玉清さんが「面白小説に魅せられて」と題して基調講演。続いて島根県知事の溝口善兵衛さんや都内の先生らがそれぞれの取り組みを報告したあと、「持続可能な未来をひらく子どもたちの読書と言葉の力」をテーマにパネルディスカッションを展開した。最後に、司書教諭の専任化や学校司書の配置などを求めるアピールを採択した。フォーラムに合わせ、同大付属小金井小で特別公開授業も行った。

◆アピールの要旨 
 情報化・グローバル社会を生きる子どもたちには、言葉の力や豊かな想像力が求められています。そのためには、読書や調べの学習など学校図書館を活用する教育が重要です。そこで、私たちは次の環境整備を強くアピールします。
 一、学校図書館の蔵書の充実を図ること
 一、司書教諭の専任化と学校司書の配置を進めること
 一、図書館活用教育の方法を教員養成課程で学べるようにすること
 一、新聞を教材として学校図書館に配備すること 

 児玉清さん 基調講演 「面白小説に魅せられて」

 10歳ぐらいの時に本の面白さに魅せられて、この65年間、ずっと面白本を追児玉清Web用.jpgいかけています。
 いま、世の中には面白い小説が満ちあふれています。医学、技術、法律など、数え上げたらきりがないほど、さまざまなジャンルを舞台に面白小説が書かれています。しかし、それを読む人が反比例するように少なくなっています。大人も読まなければ、子供も読まない。まさにいま、日本はそういう国になっています。
 『アタック25』というクイズ番組の司会をしていますが、本に関する問題の正答率は極端に低くなりました。谷崎潤一郎も知りません。「細雪」は「ほそゆき」と読まれます。夏目漱石となぜか永井荷風、そして太宰治。この3人以外はすべて消えてしまっています。
 面白小説に取り付かれたきっかけは子どものころに読んだ講談本です。不世出の大関、雷電為右衛門が、さまざまな陰謀が渦巻く中、周囲の相撲取りをバッタバッタと投げ飛ばしながら出世街道をばく進する。これを読んで、世の中には色々な不思議な人たちがいる。その人たちが様々な思いを持っているということを知りました。
 考える力、想像力が、いまどんどん欠如して、恥ずかしいような世の中になりつつあります。自分が怒られたからといって、それを他人に転嫁して刺す、あるいは医療や色々な現場で、総クレーマー化と言いますか、自分だけが良くて他人はすべて悪い、そういうような社会になりつつある。
 すべては「本」というものを捨てて来たからではないでしょうか。あまりにも読書を軽視し、経済優先とばかりに、「金もうけがすべて」という時代を続けてしまった。
 いま、世に満ちている面白小説のすべてに、人生というものがはめ込まれている。実際にどんなに波乱万丈な一生を生きても、何冊もの本を読み、たくさんの人生を重ね合わせてみることにはとてもかないません。
 「見たものだけが現実」という人たちがどんどん増えている。小説、物語を読むことによって、いかに多種多様な人間がいるか、しかもその人たちが、皆違う心を持っていることを知ることが出来る。そのことから人間をいとおしく思う心が広がることは間違いありません。
 子どもたちが本を読まない社会、国に未来はありません。決して難しい本を読めというのではなく、あらゆる人生が込められている活字の世界に触れさせるということが大切です。

パネルディスカッション
「持続可能な未来をひらく子どもたちの読書と言葉の力」

 成田 きょうは、読書指導の要である学校図書館を充実させるためにはどうすればよいのか話し合います。

 斉藤 学校図書館は、学習のためのものであることが第一ですが、忘れてはならないのは子どもたちの成長過程を保障するものだということです。学校司書は本の専門家であるだけでなく、子どものより良い援助者という役割を担っていると感じます。

 村上 本というのは手軽だが、とても奥が深い。こんな素晴らしいものを生涯知らずに過ごしてしまうのはもったいない。できれば子どもの時に、本との幸せな出会いがあってほしい。学校司書の仕事は、子どもたちすべてに本好きになる機会を与えることだと思います。

 水越 講師の皆さんの学校では、平均以上の蔵書がある。さらに、優秀な司書がいて、司書と先生方の信頼関係ができている。そのことが子どもたちの本を読む力や言葉の力をつけるために一番重要なポイントです。しかし、そうなってはいない学校が多いのです。

 前田 最近、学校図書館ブームですが、これは一過性のものではないかと危惧(きぐ)します。きょうのテーマにあるように「持続可能」なのかどうか、行政の立場から、いかがお考えですか。

 溝口 子どもたちが喜んで本を探し、「朝読」をやっている学校が増えている。でも、そうではない学校もたくさんあります。学校司書や司書教諭が必要であるのはもちろんですが、司書を支える体制も必要です。

 成田 具体的にはどうなんですか。

 溝口 小中学溝口知事Web用.jpg校の運営の権限を持つのは市町村です。その体制作りを非常に熱心にやろうとしているところもあれば、そうでないところもある。そこで、県が補助金を出して支援し、広がるようにしていきたいというのが島根県のやり方です。

 小寺 すべての教師にとって学校図書館や司書とどういう関係を作っていくかということは、大きな課題です。授業に司書をどう入り込ませるのか、どんなやり方がいいのか、結論は出せませんが、そこに大きな可能性と魅力があります。

 成田 啓明小では学校全体で取り組んでいるとのことですが……。

 安藤 そうです。新しい学習指導要領は、学校図書館の役割の重要性を一層強く打ち出しています。そこで、プロジェクトをつくり、すべての教育課程で意図的、計画的に学校図書館を活用するようにしました。さらに、4月23日の「子ども読書の日」には、地域や保護者の方々が子どもたちと一緒に楽しむ大きな学校行事を行いました。夏休みには、高齢者の方々に図書館のお手伝いをしていただいています。

 水越 よく、行政のトップが代われば変わるとか、校長が代われば学校が変わるとか言われます。私たちは「ボトムが変わればすべてが変わる」という気概でやっていきたいと思います。

 溝口 いま子どもたちが健全に育っていくことが非常に難しい時代になっている。「こういう風に学校図書館を利用すれば子どもたちの健全育成に役立つのですよ」ということを、学校現場から地域に発信することが大切だと思います。一緒に頑張っていきましょう。

 成田 子どもたちの読書と言葉の力をはぐくみ、持続継承可能な文化としての学校図書館をつくるためには、関係者の対話と協働が不可欠です。このフォーラムは、日本全国を変えていく出発点になると信じています。

事例報告

 ◆図書館職員ほぼ全校に/島根
 島根県は、今年度から、全公立小中学校の学校図書館の充実をめざし、財政支援まで行っている。
 市町村が採用する司書やボランティアの人件費の一部を県が負担するもので、1億3000万円を予算化した。補助比率は、市は2分の1、町村は3分の2。この結果、図書館職員のいる学校は、昨年度に比べ243校増えて97%にあたる337校(小中併設の2校を含む)となった。
 溝口知事は「読書教育の環境整備をさらに進めていきたい」と語った。
     ◇
 東京都中野区立啓明小には「ぐりぐら図書館」がある。児童参加型が特徴で、掲示物は子どもたちの作ったものばかり。図書委員が下級生に「読み聞かせの出前」も行っている。
 安藤元校長は「図書館指導員が子どもたち一人一人に、本を手渡している。読書傾向を知り、その子にあった本を紹介するためですが、なによりコミュニケーションを大事にしているのです」と強調した。
     ◇
 このほか、小金井小の斉藤司書教諭は「授業での教師と司書の協働」、世田谷中の村上学校司書は「子どもたちの読書と言葉の力を育む」、元成瀬台中司書教諭の小寺さんは「知的好奇心の種を育てる」をテーマに発表を行った。

特別公開授業 

 ◆オリジナルの「鬼」で図鑑
  特別公開授業を行ったのは付属小金井小2年1組。大塚健太郎司書教諭と中山美由紀学校司書の2人で指導した。絵本の読み聞かせのあと、子どもたちが絵本や物語の中から集め、1人ずつ奔放な絵に描いてきた「鬼」たちの図鑑作りに挑戦。色や性格、住むところなどどんな形で分類するのが良いのか話し合った。子どもたちの活発な発言に、参観者は感心していた。特別授業Web用.jpg

〈朝読〉 
 ホームルームや授業前の10分程度、自分の好きな本を読む活動。朝の読書推進協議会のアンケート調査では、現在、小学校1万6218校、中学校7995校で取り組んでいる。実施率はともに74%。 

 主催=東京学芸大学、活字文化推進会議、文字・活字文化推進機構
 主管=読売新聞社
 後援=日本児童図書出版協会

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